既存杭引き抜き後の埋め戻し地盤を安定化する工法を開発、長谷工コーポレーション:新工法
長谷工コーポレーションは、不動テトラとともに、杭の引き抜き跡に砂杭を充填し、地盤を安定化させる既存杭引き抜き跡埋め戻し固化砂杭工法「HiFill‐CP工法」を開発した。今後は、既存建物の解体時や残存する杭の引き抜き時にHiFill‐CP工法を活用することで、新設杭の施工品質向上を実現する。
長谷工コーポレーションは、不動テトラとともに、杭の引き抜き跡に砂杭を充填し、地盤を安定化させる既存杭引き抜き跡埋め戻し固化砂杭工法「HiFill‐CP工法」を開発したことを2022年8月26日に発表した。
固化材の添加量は少なく流動化処理土などの充填材に比べCO2排出量は少ない
建物建設時に杭を打ち込む箇所に既存建物の杭がある場合、通常はその杭を撤去しセメント系の充填材などにより埋め戻すが、埋め戻しが不完全なケースでは、新設杭施工時に杭が傾き、高精度に施工できないことがある。
そこで、長谷工コーポレーションは、不動テトラとともにHiFill‐CP工法を開発した。HiFill‐CPは、液状化対策として使用される静的締固め砂杭工法※1を利用し、既存杭の引き抜きを行った部分に、むらがなく適切な強度の砂杭を造成することで、新設杭の施工品質を確保する。
※1 静的締固め砂杭工法:液状化地盤において、砂や砕石を使用し液状化を防止する工法。
具体的には、既存杭引き抜き跡に堆積した土砂や泥水などを排出し、固化砂杭に置き換えられる他、固化材が均質に添加され、埋め戻し部の強度を制御することが可能。
さらに、固化材が添加された中詰め材により、砂杭は崩壊せず、新設杭の掘削が容易で、静的締固め砂杭工法により砂杭を造成するため、周辺地盤にあるゆるみ領域の回復にも貢献する。なお、固化材の添加量も少なく、流動化処理土などの充填材に比べCO2排出量は少ない。
既に、長谷工コーポレーションと不動テトラは、HiFill‐CP工法の試験施工で、原地盤に杭撤去跡を模擬した「模擬撤去孔」を設け、静的締固め砂杭工法による埋め戻しを行っている。実験後、埋め戻し部のボーリング調査を行い、埋め戻し部の品質、強度などを確認した。
その結果、固化砂杭強度のばらつきは小さく均質だっただけでなく、静的締固め砂杭工法による埋め戻しで、模擬撤去孔の泥水・泥土が固化砂杭に置換される様子が見られた。加えて、固化砂杭と原地盤をまたいでアースドリルによる掘削が実現することが判明し、固化砂杭を掘り出し自立することも分かった。
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