鴻池組が液状化対策の地盤改良剤を開発、アルカリ性地盤に養生5日で有効:液状化対策
鴻池組と東亞合成は、液状化対策を目的とした複合ポリマー型地盤改良剤「CXP」を共同開発した。
鴻池組と東亞合成は、京都大学大学院地球環境学堂・勝見武教授による技術指導のもと、液状化対策を目的に複合ポリマー型地盤改良剤「CXP」を共同開発した。フィールド試験では、薬液注入工法(CXPグラウト工法)で有効性が確認された。
養生期間が従来の5分の1で完了、長期的な地盤改良効果が望める
薬液注入による液状化対策の技術は、その効果が知られているが、工場施設などの敷地に多いアルカリ性地盤では、ゲル溶解度の上昇により、改良土の劣化や強度低下が懸念となっていた。また、注入後に養生期間で28日を要し、配合試験や改良効果の確認試験を含めた全体工程も長くなるため、短期間で十分な強度を発現する注入材の開発が求められていた。
新たに開発した地盤改良剤は、アクリル酸マグネシウム(以下、AA-Mg)を主剤とし、ポリ塩化アルミニウム(以下、PAC)と添加剤を混合した薬液。改良土の必要な強度に応じて、AA-MgとPACの濃度を決定する。注入後には、重合したAA-Mgから成る高分子鎖は、架橋剤となるPACでネットワークを形成し、養生期間は従来の約5分の1のわずか5日で高い架橋密度かつ高強度のゲル(複合ポリマー)になるという。
高分子鎖の主鎖骨格は、化学的に安定している炭素−炭素結合のため、劣化要因となる加水分解などの反応が発生しない。このため経時安定性が高く、長期的な地盤改良効果が得られるという。
アルカリ性地盤への適用性については、室内試験で、pH10〜12に調整した砂の改良体(サンドゲル)が液状化対策として必要な一軸圧縮強さと液状化強度を確保し、長期耐久性を有することが確認されている。安全面では、地盤改良剤が魚類や甲殻類といった水生生物に対して影響を及ぼさず、改良土は土壌汚染の対策法に適合することも証明されている。
フィールド試験は、名古屋市内の臨海部で実施し、ダブルパッカによる注入施工後に改良体の品質確認を行い、注入材が地中へ円滑に浸透したことや設計時の目標強度(60kN/m2以上)と出来形(半径1.25m以上)を十分確保することが認められた。
鴻池組では、公的機関の技術評価を取得するとともに、実工事を通じて地盤災害の防止に役立てるとしている。
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