施工管理業務で多様なデータを扱えるシステムの概念実証が完了、大林組と東大:ICT
大林組と東京大学大学院工学系研究科は、「データ・システム連携基盤を活用した施工管理システム」を開発した。両社は、データ・システム連携基盤を活用した施工管理システムを活用し、施工管理で扱う各種データを相互利用することで、施工管理業務がより効率化する概念の実証を完了した。
大林組と東京大学大学院工学系研究科は、「データ・システム連携基盤を活用した施工管理システム」を開発したことを2022年8月25日に発表した。
「データ取得層」「連携基盤層」「アプリケーション層」で構成
建設業では、ICTの活用により生産性を向上させる「i-Construction」の推進や働き方改革の実現を目的に「建設DX※1」を進めている。一方、施工管理業務でデジタル技術を駆使するためには、扱われるさまざまなデータを相互利用したアプリケーションの開発が求められている。
※1 建設DX:建設業界にデジタルトランスフォメーション(DX)を取り入れて活用すること。デジタル技術を計画や設計、施工などの各段階で取り入れることで、建設業務の省人化や高速化、高度化に役立てることを目指す。
しかし、従来のアプリケーション開発では、利用するデータとアプリケーションが結合されており、異なるデータを新たに活用するためには、その都度アプリケーションの改良が必要となり、データを横断的に扱うアプリケーションの開発が進んでいなかった。
そこで、大林組と東京大学大学院工学系研究科は、データ・システム連携基盤を活用した施工管理システムを開発した。今回のシステムは、「データ取得層」「連携基盤層」「アプリケーション層」で構成されている。
データ取得層は、建設現場の施工管理に必要なデータのBIM/CIMを含む「設計情報」、点群データなどの「環境情報」、人や建設機械の位置情報を含有する「作業員情報」と「重機情報」などに分けてデータを取得する。
連携基盤層は、クラウド上のデータ・システム連携基盤に、データ取得層で収集したデータを集約し、各アプリケーションで活用しやすいデータにして管理する他、データの検索・抽出やデータ変換などの機能があり、アプリケーション層とはAPI※2を用いて連携可能。
※2 API:Application Programming Interfaceの略称で、ソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐインタフェース。
アプリケーション層は、生産性向上や働き方改革を達成するアプリケーション領域で、各アプリケーションはデータ・システム連携基盤とAPI連携し、必要なデータを連携基盤層を通して使えるため、相乗効果があるアプリケーション開発に対応する。加えて、データの取得などを最初から行う必要がないため開発効率が高まる。
既に、大林組と東京大学大学院工学系研究科は、データ・システム連携基盤を活用した施工管理システムの概念実証を完了している。
概念実証では、設計情報や環境情報、作業員・重機の位置情報を取得し、データ・システム連携基盤で各データを連携させた。具体的には、「BIM/CIMや点群の3D描写データ」と「人や建設機械の位置管理のデータ」を連携し、「BIM/CIMを含む3D空間で人や建設機械の位置を描写・管理するアプリケーション」を作成して、作業員の動作を効率的に確認した。
さらに、大林組と東京大学大学院工学系研究科は、上記の概念実証で得られた成果を基に、連携基盤層が備えた機能の有効性をチェックするとともに、「データ・システム連携基盤」を協調領域(オープン領域)として広く公開し、実用化されるように研究開発を続ける。将来は、建設現場の生産性向上を図り、働き方改革の実現に貢献する。
なお、今回の成果は、東京大学大学院工学系研究科が行う「i-Constructionシステム学寄付講座」と大林組の共同研究「土木躯体工事におけるCPSを活用した施工管理システムの開発」で得られた成果の一部。
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