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なぜコマツが、施工プロセス全体の改革「DXスマートコンストラクション」を志すのか?新会社「EARTHBRAIN」の狙い第4回 建設・測量生産性向上展(2/2 ページ)

建設産業は、労働力不足という大きな壁に直面している。しかし、減少する労働力に合わせて工事数を減らすという選択肢はない。労働力が減少する中でも仕事を続け業績を向上させるには、1人あたりの労働生産性を上げ、少ない人数で今まで以上に施工を行う必要がある。コマツは、建設産業が抱えるこうした課題の解決に向け、これまでにICT建機やマシンコントロール、ドローンといったテクノロジーを活用した独自の「DXスマートコンストラクション」に取り組んできた。

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スマートコンストラクションを建設業のDXへ

 スマートコンストラクションの方向性を再検討するにあたり、コマツは1つの仮説を導き出す。それは、「さまざまなプロセスが全部デジタル化され、建設現場がデジタル上で再現できるようになった際、初めて全てがつながって新たなプロセスが生まれてくるはず」というものだ。現実と仮想が連動する“デジタルツイン”の環境が実現すると、建設生産プロセス自体の変革が起きる。これは、まさに建設DXだ。


全てのプロセスが“ヨコ”につながることで、DXが実現

 デジタル化の仮説は、ドイツの現場で検証した。当時、建設産業のデジタル化はヨーロッパが先行しており、なかでもドイツが“つながり”を強く意識していたからだ。だが、そこで驚くべき事実が判明する。技術で先行するドイツですら、一番大切な生産現場である施工中のステップが、全くデジタル化されていなかった。

 そのために、コマツは建設現場の状況をリアルタイムで把握することを試みる。四家氏は、「建設現場で動く機械、人、材料、サプライヤーも含めて、全てがデジタル化され、状況がリアルタイムに把握できた場合、建設のプロセスがどうなるかを確認しておきたかった」と説明。デジタル化の構想は、ドイツの顧客にも期待を持って受け入れられた。

 実現に向け2019年に、「デジタルトランスフォーメーション(DX)スマートコンストラクション」という新たなコンセプトを打ち出し、開発がスタートした。

“コト”の開発を加速させる新会社を設立

 コマツのDXスマートコンストラクションは、建設業界に大きなインパクトをもたらす。ただ、モノ作り100年の歴史があるコマツは、「モノづくりはできるが、それ以外は不得意」(四家氏)だったため、モノを横軸、コトを縦軸にしたロードマップを策定した。

 横軸は、今まで通りハードウェアで自動化/自律化する方向で、最終的には無人化を目標に設定する。一方の縦軸は、プロセス全体の最適化とし、顧客価値の最大化を追求する。


コマツのDXは、モノとコトの両面で実現を目指す

 具体的な開発としては、現場のデジタル化、プラットフォーム、SaaSアプリケーションの3つのレイヤーで進める。まず、現場に近い所では、サプライヤーが使うダンプトラックを含め、現場にある機械の動きをデジタル化するソフトウェア、ドローン測量に対応したアプリケーション、人が連絡に利用するツールなどで現場情報をデジタル化する。しかしながら、各種ソリューションをただ実用化するだけでなく、当然ながら現場での導入が進むように、安価であることが重視される。既存の重機に、安価かつ後付けで取り付けることで、3Dマシンガイダンスを可能にする「レトロフィットキット」などはその代表といえるだろう。

 さらにデジタル化したデータを処理するプラットフォームも欠かせない。プラットフォーム上の情報を有効活用して、生産性を上げるためのSaaSアプリケーションの開発も必要となる。コマツのDXスマートコンストラクションは、こうした3つのレイヤーが一体となって機能する。


DXスマートコンストラクションを形作る3つのレイヤー

プラットフォームの情報は、最終的には“現場”に戻り、効率化や安全性といった価値を生む

 四家氏は、コマツにとって“コトの開発”は「新たなチャレンジ」と強調する。事実、開発のスピードを上げるため、ソフトウェアや多様なデバイスを開発する組織をコマツから分社させ、2017年に設立したランドログを発展させる形で、2021年7月に建設現場のDXを進める新会社「EARTHBRAIN(アースブレイン)」を設立した。出資社にはNTTコミュニケーションズ、ソニーセミコンダクタソリューションズ、野村総合研究所が名を連ね、4社によるジョイントベンチャー。代表取締役会長は四家氏が務め、スピード感を持って建設の生産プロセス全体の変革に臨む。


4社によるJVとして設立したEARTHBRAIN(旧社名:ランドログ)。DXスマートコンストラクションの“コト”に関する開発を担当する

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