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都市部での飛行許可が免除!“釣り”の発想から生まれた西武建設の外壁検査ドローンシステムJapan Drone2022(2/2 ページ)

西武建設が開発した「ラインドローンシステム」は、建物外壁検査用ドローンシステム。屋上と地上の2点に固定されたラインの間をドローンが飛行するため、飛行の安全性が高く、人口密集地で使用する場合でも国土交通省航空局への飛行許可の申請が要らない。また、建築研究所や東京理科大学と共同で開発している「接触・微破壊式ドローン」は、飛行しながら人の手の届かない高所での削孔に成功した。

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足場要らずで外壁点検が効率化

 また、通常の外壁点検では足場の設置が必要になるが、ラインドローンシステムならば、屋上にブラケットを固定するブラケットレシーバー、地上にはセイフティポートをそれぞれ設置し、順に横に移動させながら検査するため、足場を組むよりも短期間で効率よく作業にあたれる。北村氏は、「都内で実施した幅40メートルほどのマンション外壁検査では、ブラケットレシーバーとセイフティポートの位置を14回程度、横移動しただけで完了した。カメラの性能を上げれば、10回程度の移動で済むのでは」と見込む。

 さらに、ラインドローンシステムでは、人口密集地(DID地区)で使用する場合でも国土交通省 航空局への飛行許可申請が免除される点も、システムを使用するプラスの要素だ。2021年9月の航空法施行規則改正で、十分な強度を有する紐(ひも)など(30メートル以下)で係留し、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理などの措置を講じた場合は、ドローンの飛行許可/承認が不要となったことによるもの。

 これまでの導入実績は、焼却施設のコンクリート表面や区役所外壁、マンションタイルの劣化調査など、2021年5月時点で10件以上に使用されている。ラインドローンシステムの運用には、ドローンパイロット1人、ラインドローンシステム管理者1人、ラインドローンシステム管理者のサポート1人以上、ブラケット保持者2人以上が必要となる。ラインドローンシステム管理者の資格を取得するためには、JADAの建築ドローン安全教育講習会を修了した後、西武建設が実施するラインドローンシステム管理者講習を修了しなければならない。

 なお、ラインドローンシステムは、上下2カ所を固定することでフライアウェイを防止し、墜落しても離着陸箇所(セイフティポート)に誘導できる点と、外壁点検を行うために必要な安全管理体制/教育体制が整備されていることの2点が評価され、JADAの技術評価を受けている。


JADAの技術評価書

より詳細な削孔調査が可能な「接触・微破壊式ドローン」

 西武建設のブースには、注目に値するもう1つの機体が紹介されていた。それは、ドローンを用いた建物の2次/3次調査での削孔を目的とし、西武建設と建築研究所、東京理科大学が共同で開発を進める「接触・微破壊式ドローン」だ。


カーボン機体の「接触・微破壊式ドローン」

 カーボンのパイプで構成し、4つの回転翼を用いるクアッド型ドローンの機体寸法は、幅1640(幅)×1000(高さ)×1353(奥行き)ミリ、電源ケーブルの長さは約10メートル、重さ13.4キロ(電源ケーブルを除く)。電源はリチウムイオンバッテリーで、フライト中に地上から有線で給電しながら飛行する。

 調査方法は、機体前面を壁に押し付けながら、取り付けられたドリルでコンクリート壁面を削孔。ドローンを押し付けただけでは、削孔中の機体のブレや回転が起こってしまうため、機体の左右に取り付けられた滑車を通した2本のワイヤでドローンを固定することにより、精度を確保している。


機体の固定に使用する滑車

 2022年3月に実施した実験では、人の手の届かない2.5メートル付近で直径8ミリ、深さ50ミリの孔を開けることに成功した。


コンクリート壁面への削孔実験 提供:西武建設

ドリルであけた孔 提供:西武建設

 西武建設の北村氏は、「ようやく今春に飛行しながらの削孔に成功した段階で、開発はまだこれから。今後は、機体の軽量化や小型化、固定方法などを改良し、実用化につなげたい」と展望を語った。

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