後処理キネマティック測位対応国産ドローンを発売、エアロセンス:Japan Drone2022
エアロセンスは、2周波GNSS受信機内蔵・後処理キネマティック測位対応ドローン「エアロボPPK(AS-MC03-PPK)」の受注をスタートした。エアロボPPKは、国産市販機として初めて後処理キネマティックに対応した測量専用ドローン。さらに、2周波GNSS受信機により算出した機体の位置情報と撮影時刻の情報を基に、飛行後に、ドローンで撮影した画像と統合処理することができる。これにより、一般的な写真測量に求められる対空標識の設置数を減らせ、精度の高い測位情報を得られる。その結果、i-Construction基準である±5センチ以内の測量精度を実現しながら、広域の写真測量では所要時間削減に役立つ。
エアロセンスは、2周波GNSS受信機内蔵・後処理キネマティック測位対応ドローン「エアロボPPK(AS-MC03-PPK)」の受注を2022年5月25日に開始した。
ソニーのミラーレス一眼カメラを搭載
エアロボPPKは、2周波GNSS受信モジュールにより、GNSS衛星から発せられる2種類の電波が到着する時間を比較し遅延量の差を読み取り、飛行するドローン機体の位置と高さの正確な位置情報を算出する他、ソニーのミラーレス一眼カメラを搭載しており、精細な画像撮影が行える。
カメラのシャッタータイミングは、GNSS情報の受信を同期させるので、高精度な位置情報付きの画像データを取得する。カメラには、メカシャッターを採用し、高速なシャッタースピードに設定することで、ひずみの少ない画像を撮影するだけでなく、カメラの保持には3軸ジンバル機構を採用し、飛行中の揺れの影響を軽減させるため、飛行中でも安定した質の高い画像を撮れる。
さらに、精度の高い測位情報を衛星から直接得られるため、標定点※1として対空標識を設置しなくても、i-Construction基準(±5センチ以内)の測量精度を実現するため、これまでの広範囲測量で生じる多数の標定点を設置する手間や回収の負担を減らせる。
※1 標定点:測量地点のデータを抽出する際の基準となる、標高と水平の基準が明確な点で、地上に設置して対空標識を置く。撮影時のカメラの位置や姿勢、隣り合う写真の相互関係、写真と撮影地域の3次元座標系との対応を求めるために用いる。
「エアロボPPK」の測量結果レポート、測量条件(標定点はなし、検証点を5点設置、撮影高度50メートル、地上分解能1センチ/ピクセル以下、地上局として電子基準点を使用) 出典:エアロセンスプレスリリース
これにより、生産性が高い測量方法を達成し、災害現場や人の立ち入りが難しい場所、地域など、対空標識の設置が困難だった場所の測量でも役立つ。
加えて、事前に飛行経路を設定することで、飛行自体も完全自律運用でき、取得した高品質の画像を、正確なシャッター時刻とGNSS情報を同期させて、集約し全て機体本体に記録する。
そのため、飛行後に、取得したそれらのデータを、SDカードからそのまま「エアロボクラウド※2」に簡単な手順でアップロード可能。その後、計算開始を指示するだけで、機体の測位情報や撮影画像、検証点のデータをまとめて高速処理し、複雑な操作なく測量結果としての成果物を得られる。
※2 エアロボクラウド:写真測量データを高速処理できる画像解析クラウドソフト。エアロボPPKで取得した高精度の後処理キネマティック情報とフォトグラメトリー処理を、複雑な操作なしに自動で連携する。地表3Dモデルなどを、高い品質の成果物として取得可能。
また、各工程の操作性はシンプルで、ドローンやデータ解析に関する操作経験の少ない人でも安全に簡単に使える。
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