フジタが山岳トンネル用のAI機能付き積み込み機を開発、20%の省人化を実現:AI
大和ハウスグループのフジタは、三井三池製作所と共同で、山岳トンネルにおける掘削ズリだし作業の省力化と省人化を実現するAI機能搭載の積み込み機「AIロックローダ」を開発した。なお、AIロックローダのように、自動で掘削ズリのかき込みと積み込みが可能な機械の開発は国内初だという。
大和ハウスグループのフジタは、三井三池製作所と共同で、山岳トンネルにおける掘削ズリ(掘削によって発生する岩塊)だし作業の省力化と省人化を実現するAI機能搭載の積み込み機「AIロックローダ」を開発したことを2022年8月2日に発表した。
ズリのかき込みから積み込みまでの一連作業でオペレーターを不要に
山岳トンネルの施工は、発破やズリだし(積込み,運搬)、支保工の順に作業を行う。とくに、ズリだし作業は、使用する大型ダンプの台数やトンネル内外への運行サイクルなどの影響で、次工程の支保工作業まで長い時間を要し、積み込み機械(ホイールローダやバックホウ)に乗車するオペレーターの拘束時間も長くなる。
そのため、従来の施工方法では、運搬機械(大型ダンプや連続ベルトコンベヤー)の改造・改善などを行うことで、ズリだし作業の効率化を図ってきた。ズリだし作業をより省力化するために、フジタはAIロックローダを開発した。
AIロックローダは、発破後に切羽(きりは)から運搬されたズリをかき寄せる「掘削ブーム」や機械後方へ直接ズリを排出し、大型ダンプなどに積み込みを行う「排土ベルコン」、機械運転席前方に配置したセンシング機器、GPU盤(AI自動運転盤)などで構成される。
作業手順は、まず、AIロックローダを切羽の後方に設置する。次に、発破後のズリをAIロックローダの前方に仮置きした後、大型ダンプなどの運搬機械へAIロックローダにより掘削ズリを自動積み込みすることで、省力化・省人化を図る。
特徴は、AIによりズリのかき込みから積み込みまでの一連作業がオペレーター不要で行え、省力化と省人化を実現する点。さらに、発破後の切羽ズリを迅速に処理し、切羽作業エリアで速やかに次工程(支保工作業)が行えるようになるため、トンネル掘削の効率化を達成する。
具体的には、AIロックローダは、AI自動運転によりズリのかき込みと積み込みが行え、20%の省人化を実現し、AIセンシングで人や機械の検知と自動停止に応じ、安全性も高い。加えて、AI運転モード、半自動モード、手動モードの3種類から操作方法を選べる。
既に、フジタは、徳島県小松島市櫛渕町久ヶ谷〜阿南市羽ノ浦町岩脇猪ノ谷地先で施工を進める「羽ノ浦トンネル工事」の現場にAIロックローダを導入している。その結果、AIロックローダの採用により、トンネル発破後の切羽作業エリアで、次工程の支保工作業へ円滑に移行した。また、ズリ積み込み作業のオペレーターが必要なくなり、20%の省人化を実現し、省力化につながった。
今後は、さまざまな運搬方式のトンネル工事へ適用することを踏まえ、AIロックローダの導入を進めていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 戸田建設の「AI切羽評価支援システム」、現場事務所に居ながらボタンを押すだけ
戸田建設は、山岳トンネル工事で地山状況の予測や支保パターンの妥当性を評価する「切羽観察」で、技術者によって生じる結果のブレを無くすため、判断をAIに置き換える羽評価支援システムの開発に着手した。 - 山岳トンネルのロックボルトを自動打設、モルタル供給装置を一体化
戸田建設らは、山岳トンネル施工向けロックボルト自動打設機“ロボルト”を開発し宇治田原トンネル東工事に導入した。モルタル供給装置を一体化することで、ロックボルト設置を迅速かつ良好な作業環境で可能にする。 - AIを用いた「最適発破設計システム」を国交省の現場で試行、戸田建設ら
戸田建設、Rist、演算工房の3社で構成されるコンソーシアムは、山岳トンネルの発破掘削工法として、最適な掘削形状となる発破パターンをAIで算出する「最適発破設計システム(仮称)」を開発した。今後は、最適発破設計システムが、発破の影響が大きいと思われる一部のパラメータをベースに発破設計の自動化を行ったものであることを踏まえ、多様な地質に対応するため、新たなパラメータを組み込み、精度を高めていく。 - シールド工事をAIで自動化、専門技術者の判断を代替
戸田建設は、トンネルのシールド工事をAI化で自動化する「AI Transformシールド」を開発した。今までは、専門技術者の判断に頼っていた掘進管理データをAIに置き換えることで、掘進管理を効率化させ品質の向上にもつなげる。