清水建設が半乾式耐火被覆吹付ロボの性能を検証、生産性の30%向上を確認:ロボット
清水建設は、耐火被覆吹き付け作業の効率化と業務環境の改善を目的に、6軸のロボットアームを駆使して、被覆材を万遍なく吹き付ける半乾式耐火覆吹付ロボット「Robo-Spray」を開発した。今後は、Robo-Sprayの台車に電動走行機能を付加し、生産性をより向上させる予定だ。
清水建設は、耐火被覆吹き付け作業の効率化と業務環境の改善を目的に、6軸のロボットアームを駆使して、被覆材を万遍なく吹き付ける半乾式耐火覆吹付ロボット「Robo-Spray」を開発し、同社が港区で施工を進める「虎ノ門・麻布台再開発プロジェクトのA街区タワー」でRobo-Spray プロトタイプの施工性能を確認したことを2022年7月22日に公表した。
虎ノ門・麻布台再開発プロジェクトA街区で434m2に被覆材を吹き付け
半乾式耐火被覆の吹き付けを行う作業員と吹き付け工は、被覆材を遮る防護服や防じんメガネとマスクを着用するため、夏場は過酷な環境下での業務となる。
一方、生産性については、被覆材の供給、吹き付け、補助を行う3人の作業員を要するが、1日の出来高は2時間耐火45ミリ厚で約100平方メートル(1日当たり1人が33平方メートルを実施)にとどまることから、建設各社は耐火被覆吹付ロボットの開発に取り組んでいる。
そこで、清水建設は、Robo-Sprayを開発した。Robo-Sprayは、アーム部、アーム部の高さを調整するリフター、リフターを搭載した台車で構成され、プロトタイプは台車の移動が手動になっている。
さらに、6軸のロボットアームで被覆材の吹き付けノズルを自在に操りながら、梁(はり)の両脇と梁下に耐火被覆を吹き付けられる。
Robo-Sprayの操作手順は、作業員が最初にロボットを所定の位置に移動した後、タッチパネルから鉄骨梁の断面形状、梁天端の高さ、吹き付け範囲、吹き付けノズルの作動速度、吹き付け角度などを設定し、スタートボタンを押す。
次に、ロボットアームがノズルの角度や鉄骨梁との相対位置、作動速度を適切に保ちながら吹き付け作業を行う。吹き付けピッチは4〜7センチで、吹き付け厚はノズルの作動速度や吹付ピッチで調整し、台車を一度移動すると梁幅2.5メートルに対応する。なお、鉄骨梁には設備配管用の貫通孔が設けられるが、タッチパネルから径や位置情報を入力することで、貫通孔を回避した吹き付けが行える。
さらに、虎ノ門・麻布台再開発プロジェクトA街区では、Robo-Sprayにより43階や46階、49階における梁の一部を対象に、合計で434平方メートルに被覆材を吹き付けた。加えて、施工データを分析した結果、所定の施工品質を確保した上で、従来の3人体制で確実に2台のRobo-Sprayを操作でき、これにより1日の出来高が約130平方メートルとなり生産性が約30%向上することを確かめた。
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