「中銀カプセルタワービル」を丸ごと3Dデータ化、デジタルアーカイブで後世へ残す:点群
メタボリズムの名建築として知られる東京・銀座の「中銀カプセルタワービル」が老朽化で取り壊されることに伴い、3次元データで保存を試みるプロジェクトが進行中だ。
クモノスコーポレーションは2022年6月10日、メタボリズムの名建築「中銀カプセルタワービル」を3次元計測技術で複雑な形状を正確に記録し、黒川紀章氏が設計した建築の価値をデジタルレガシーとして後世へ継承していくことを目指していると明らかにした。
レーザースキャンとドローン撮影で丸ごと3次元データ化
中銀カプセルタワービルは、1970年大阪万博で、カプセル建築と出会った中銀グループの創業者・渡辺酉蔵氏が、建築家・黒川紀章氏に集合住宅の設計を依頼し、1972年に完成した。現在ではメタボリズムの名建築として知られるが、竣工から50年が経過した建物は、老朽化が進んでいるため、2022年4月から解体工事が始まっている。
そのため、建築や都市のデジタル化を推進してきたgluon(グルーオン)が中心となり、3次元計測技術で複雑な形状を3次元データで正確に記録し、名建築の価値を後世へ継承する「3D Digital Archive Project」の一環で制作費などを募るクラウドファンディングがスタート。クラウドファンディングサイト「MotionGallery」で、中銀カプセルのNFTなどをリターンとして資金を募っている。企画・監修は、gluonの東京大学 生産技術研究所 特任教授 豊田啓介氏と東京藝術大学 美術学部 建築科教授 金田充弘氏。クモノスコーポレーションは、プロジェクトに3次元データスキャンの担当として参画している。
中銀カプセルタワーの記録には、ミリ単位で正確な距離を計測できるレーザースキャンの3Dスキャンデータと、一眼レフカメラやドローンで撮影した2万枚以上の写真データを組み合わせ、建物全体をスキャン。実空間の情報を丸ごと3次元データ化し、平面的な写真や図面だけでは記録しきれない複雑な形状や立体的な構造を記録することで、建築形状を正確に把握し、デジタルアーカイブとして後世へ残す。
中銀カプセルタワービル(写真奥)の前で、ARの同ビル(写真手前)と撮影。3Dデータとして記録を残しておくことでARで在りし日の姿をスマートフォン越しにいつでも呼び起こすことができる 出典:gluonプレスリリース
従来、建築は、写真や図面による2次元での記録が一般的だったが、建物内に入った感覚や角度によって変化する佇まいは、写真や図面では伝達しきれない。そこで、3次元計測技術を活用して、3次元空間を点群データでそのまま3Dデータ化することとした。
3D Digital Archive Projectでは、これまでに建築家・菊竹清訓氏による「旧都城市民会館」の測量データと写真で3Dモデルを作成。跡地でスマホでかざすと会館が出現するARやVRゴーグルで360度の視点で見て回れるVRをはじめ、物質性を超えたバーチャルな建築に生まれ変わらせている。
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