発注者が受注者にBIM要望を正しく伝えるための“ガイドブック”を日建設計が公開:BIM
日建設計は、発注者と受注者の間でBIMデータの活用方法を「EIR(発注者情報要件)」によって、的確に共有できるためのガイドブックを公開した。
日建設計は、日本の建築領域でDX推進による生産性向上が必要とされるなか、BIMの効果的な活用を促すためのハンドブック「BIM Uses Definitions Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク」を制作し、同社のWebサイトにてPDF形式で公開したと2022年5月10日に公表した。
21項目からBIM利用の要望を選択して「EIR」に記載
BIMは国内では設計者や施工者によるモノづくりのためのツールとして活用されてきたが、BIM活用促進のため、今後は企画から維持管理・運用までに至る建物のライフサイクルの観点で、発注者が主体的に利用できるような有益な情報を整理していくことが重視されている。
発注者が積極的にBIMを活用するために、「EIR(Employer's Information Requirements:発注者情報要件)」という書類で、各段階で「どのような目的で、どのようにBIMデータを利用するか」を記述することが求められている。しかし、BIMの活用方法の要望を文章で記載するだけでは受注者に正しく意図を伝えることが難しく、発注者と受注者の間で誤解が生じることもあり、効果的なBIM活用には課題があった。
そこで日建設計は、発注者と受注者の円滑な意思疎通をサポートし、業界全体でBIMの活用を推進するため、ニュージーランドのBIMinNZ Steering Groupが作成した「The New Zealand BIM Handbook」の付録資料「Appendix D BIM Uses Definitions」に着目(オリジナルはペンシルバニア州立大学の「BIM Project Execution Planning Guide」に記載されていた資料)。
2019年に第3版として改訂された付録資料は、ISO 19650をベースにニュージーランドの諸事情に照らし合わせながら整備され、EIR、BEPのテンプレートならびに記入例などが掲載。発注者の要望を21項目の「BIM USES」に分類し、そのなかからBIM利用法を選択し、EIRに記載することで、活用方法を受注者へ正しく伝えることができるもので、ニュージーランドをはじめ、世界各国で活用されている。
このたび、日建設計はニュージーランド版「Appendix D BIM Uses Definitions」の内容を分析し、日本の事情に合わせて翻訳。建築設計・建設・施設管理におけるBIMの利用促進の目的であれば、出典を明らかにした上で2次利用が可能で、施設整備・管理に携わる多様な関係者にハンドブックを活用してもらうことで、発注者と受注者がBIM活用方法を正確に共有できるようになり、建築領域のDX推進につながると期待を込めている。
「BIM Uses Definitions Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク」の21項目から成る「BIM USES」 出典:「BIM Uses Definitions Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク」
また、ハンドブックは、国土交通省の「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」に採択された「Life Cycle Consulting 発注者視点でのBIM・LCCに関する効果検証/課題分析」にて、実プロジェクト「(仮称)プレファス吉祥寺大通り」のライフサイクルコンサルティング業務の一貫で検証し、その有効性を既に確認したという。関連記事
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