西松建設が自動化セントルの現場実証を完了、覆工班6人を2〜4人に削減可能:山岳トンネル工事
西松建設は、福島県の南湖トンネルで、岐阜工業と共同開発した「自動化セントル」を初導入し、施工実証を完了した。自動化セントルは、制御盤でのボタン操作のみで、セントルのセットから覆工コンクリートの打込み、脱型・移動までの基本作業を行え、これまで6人で行っていた一連の作業を2〜4人で実施できることが分かっている。今後、中国地方で施工中のトンネル現場にも導入する予定だ。
西松建設は、福島県の南湖トンネルで、岐阜工業と共同開発した「自動化セントル」を初導入し、施工実証を完了したことを2022年4月21日に発表した。
セントルの据付誤差は従来の人力による作業と同程度
山岳トンネル工事での覆工作業は、一般にアーチ型の移動式鋼製型枠(セントル)を使用して行う。作業の手順は、まずセントルを所定位置にセットし、次に覆工コンクリートを打込んだ後、セントルの脱型・移動を基本とする。こういった一連の作業は、通常6人の作業員によって、2日サイクルで繰り返しながら進める。
しかし、狭いセントル内での作業だけでなく、年配の作業員も増えており、解決策として、作業の機械化やICTをはじめとしたDX技術の活用による作業効率化のニーズが高まっている。そこで、西松建設は、岐阜工業と自動化セントルを共同開発した。
自動化セントルは、一連の覆工作業を全て機械制御化し、ボタン操作による指令のみでセントルの基本動作を実施・制御する。自動化セントルのシステムは、自動セットシステム、覆工コンクリート打設自動化システム、脱型・移動システムで構成される。
自動セットシステムは、測量機器やアクチュエータ、各種センシング装置などと連携し、専用制御盤での操作でセントルを所定位置へ正確にセットできるシステム。具体的には、自動追尾トータルステーションで取得したセントルの自己位置データと設計値との差分値に基づき、セントルの位置や姿勢が自動調整され、フォームを所定位置まで安全に自動拡幅する。
加えて、従来6人で60〜90分ほど要していた作業を、最小2人の作業員で半分以下の時間にまで短縮する他、最終セットはトンネルの設計寸法ではなく既設覆工の出来形に合わせてセントルを調整セットするため、段差や隙間がなく、セントルの据付誤差は従来の人力による作業と同程度の3ミリ以内だった。
覆工コンクリート打設自動化システムは、コンクリート検知センサーと自走式マニピュレータによる配管切替装置を用いて、覆工コンクリートの打込み作業を自動化した技術。
具体的には、あらかじめ設定した配管孔前に自走式マニピュレータを停止した後、自動で配管を接続し、直ちにコンクリートの圧送を開始するだけでなく、覆工コンクリートが所定の打込み高さに達すると自動停止し、圧縮空気を送って管内を清掃後、次の配管孔へ自動で切り替わって打込みを再開する。
さらに、打込み高さや型枠側圧などの打込み進捗状況は、タブレット端末などで確かめられ、状況に応じて、遠隔操作で任意の配管孔へと切り替える手動制御にも対応。特徴は、普通コンクリートや中流動コンクリート、短繊維補強コンクリートなどにも適用する点で、とくに高流動コンクリートを用いた場合に、打込みに要する作業員は最小2人で、総作業時間(作業員人数×作業時間)は同社実績比で75%の削減効果を実現した。
脱型・移動システムに関して、セントル脱型時のフォーム収納やセントルダウンの操作は、自動セット作業の逆手順によりボタン操作のみで行え、セントルの走行移動は自走装置制御盤で自動化されており、移動量を入力するだけでセントルを任意の位置まで動かせる。
西松建設では、覆工作業を機械化した自動化セントルが、従前の施工方法と同等の作業精度と施工品質を持ちつつ、覆工作業を2〜4人で効率的に行えることを確認した。また、自動化セントルを用いた現場施工の取り組みが評価され、国土交通省が主催する令和3年度「みちのくi-Construction奨励賞(民間企業部門)」を受賞している。
なお、西松建設では、山岳トンネル無人化施工システム「Tunnel RemOS」の開発に取り組んでおり、2023年度までに各種関連技術を完成させる計画で、自動化セントルは、覆工コンクリート技術「Tunnel RemOS-Lining」に位置付けられる。
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