セントル型枠のセット作業や打設中の挙動監視、出来形を統合管理する新システム:山岳トンネル工事
戸田建設は、トンネル工事でセントル型枠設置作業の全自動化を実現するシステム開発を進めている。このほど、セントル型枠のセット作業や打設中の挙動監視、出来形管理などの工程をマネジメントする新システムを開発した。
戸田建設は2020年1月22日、トンネルの覆工コンクリート施工で、セントル型枠のセット作業や打設中の挙動監視、出来形管理などの工程を統合的にマネジメントするシステム「セントルEye」を開発したことを発表した。
TSがあればセントルEyeは使用可能
セントルEyeは、セントル型枠に設置した複数の光学ミラー(プリズム)をトータルステーション(TS)で自動追尾させ測量を行い、リアルタイムにセントル型枠の位置情報を取得して、タブレット端末でモニタリングする。従来、時間と手間を要していたセントル型枠設置時の測量や打設中の挙動監視、覆工内空出来形測量までの作業を連続して実施することで、トンネル覆工作業の統合的な管理を実現し、覆工作業の省力化や効率化、コンクリート打設速度の的確なコントロールが図れる。
具体的なセントルEyeにおけるセントル型枠の設置からコンクリート打設、出来形測量までのワークフローは、まずTSを設置し、移動するセントルを自動で捕捉させ、タブレット端末で高さや中心線、幅の位置(規定の位置と実測の差)をモニタリングしながら、所定の位置まで誘導する。履工打設時には、TSの測量でセントル型枠の押出し変形や沈下を観察して、打設速度や打設口などを調整する。打設完了後は、TSで履工の内空出来形を測量し記録する。
これまでの方法は、下げ振りを用いた位置確認やスチールテープによる距離測定で、セントル型枠中央部を通行する工事車両と作業員が接触するリスクがあった。だが、セントルEyeは、セントル型枠中央部の車両通行帯から離れた位置で、TS1台で測量が可能なため、工事車両と接触しにくい。
覆工コンクリート打設時にセントル型枠が横移動や沈下した場合は、即座に位置情報からコンクリート打設速度や打設ポイントを調節し、品質の確保につなげられる。また、吹付コンクリートや鋼製支保工の断面測定データと、セントル位置情報を重ね合わせることで、これまでよりも高精度で覆工内空出来形や覆工巻厚を管理できるようになる。
セントルEyeは、あらゆるメーカーのセントル型枠に適用しているため、汎用性に優れている。さらに、特別な装置や設備が不要で、TSのみで使えるため、施工途中のトンネルにも採用が容易で、安価に工程に組み込める。TSによる測量はタブレット端末と連動しているため、測量員1人でセントルの位置情報を得られ、省人化にも貢献する。
現在、セントルEyeは、全長2265メートルの「福島県博士トンネル工事(昭和村側工区)」において、約310メートルに及ぶ30回の覆工作業に導入し、有効性を確認したという。
今後、戸田建設は、セントルEyeを同社の各トンネル現場に適用して、検証結果をフィードバックし、さらにシステムの完成度を高めていく方針だ。セントル型枠設置作業の全自動化にむけて、セントル型枠の各種ジャッキ類や走行モーターと連携するアップデートも計画している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 戸田建設がトンネル工事のレール移動を自動化、省人化と安全性向上を実現
山岳トンネル工事などで行われるレール移動作業は効率性が問題となっていた。例えば、延長1000メートルのトンネルの場合、レール移動回数は作業台車とセントルを合わせて約200回にもなり、1回の移動で約30分要するとともに5〜6人の作業員が必要だった。こういった状況を踏まえて、戸田建設と岐阜工業はレール移動作業を自動化する急曲線対応型自動レール移動システム「Rail Walker System」を開発した。 - 山岳トンネル工事の切羽面を“3Dスキャナー”で点群データ取得、整形が必要な箇所を可視化
西松建設とビュープラスは、山岳トンネル切羽掘削面の整形作業の安全性向上と効率化を目的に、「切羽掘削形状モニタリングシステム」を開発した。高速3Dスキャナーで、切羽面の整形が必要な箇所を15秒程度で迅速に可視化し、作業効率と安全確保をもたらす。 - リコーの一般車用トンネル点検システムが「NETIS」に登録
リコーが開発した一般車両に搭載するタイプのトンネル点検システムが、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録された。新システムは、車でトンネル内を走るだけで、覆工面の状態を計測でき、調書作成などの業務プロセスも自動化される。 - 「HoloLens」と「GyroEyeHolo」でトンネル補修履歴を現場にMR表示、ひび割れや漏水の特定容易に作業時間が半減
三井住友建設は、導水路トンネルの調査・点検業務を対象に、MR(Mixed Reality:複合現実)で、現実空間に補修履歴や調査・点検記録を3D表示させる「MOLE-FMR(モール-Field Mixed Reality)」を開発した。