既存建物杭と干渉する新設杭を遅滞なく打設する工法を開発、フジタ:施工
フジタと日本コンクリート工業は、既存杭の撤去孔を効率的に、均質な改良土で埋め戻す「FUNC-RES工法」を共同で開発した。FUNC-RES工法は、既存杭の撤去孔に堆積した超軟弱土を適切な強さかつ均質な土質に改良し、その後、新設杭打設の施工効率を向上させる。加えて、施工期間や施工機械の稼働時間が短縮でき、CO2排出量削減だけでなく、周辺の生活環境で生じる負荷低減も期待される。2021年には、千葉県柏市内のマンション建替え工事でFUNC-RES工法を採用し、有効性を確認した。
大和ハウスグループのフジタと日本コンクリート工業は、既存杭の撤去孔を効率的に、均質な改良土で埋め戻す「FUNC-RES工法」を共同で開発したことを2022年4月27日に発表した。
全体工期を短くする事で施工機械の稼働時間をカット
国内では、既存の建物を解体し同じ敷地に新たに建物を建てる場合に、新設建物の杭打設予定位置に既存建物の杭が残っている場合は既存杭を引き抜かなければならない。
さらに、従来工法では、既存杭を引き抜いた後の孔にセメント系固化材などの改良材を投入して、埋め戻すが、細長い孔内では十分な混合が難しいため不均一となり、そこに新設杭を打設する際には、既存杭が干渉しない位置に打設するケースと比べて施工能率が落ち、通常の新設杭打設より工期が長くなることがある。
解決策として、フジタと日本コンクリート工業はFUNC-RES工法を開発した。FUNC-RES工法は、既存杭を引抜いた後に体積調整用の砂を投入し、新たに開発した撹拌装置で固化材を添加しながら孔内全体を改良する。
撹拌装置は、ケーシングと連動して回転する撹拌翼や掘削翼と、孔周囲の地盤に貫入させた回転防止板により静止する固定翼を交互に配置した構造で、塊状の粘性土も細断されるため、超軟弱土や砂、固化材を十分に混合し、孔内を均質に改良可能。
加えて、既存杭を引き抜く際に活用するケーシングの先端にアダプターを介して接続するため、既存杭の引き抜きから土質改良まで一連の工程で重機を入れ替える必要が無く、高効率な施工を実現する。
具体的には、既存杭撤去孔を適切な強さかつ均質な土質に改良し、新設杭の打設時に生じる工期を短縮する他、撹拌措置は汎用のケーシング先端に取り付けられ効率的な施工を達成し、全体工期を短くする事で、施工機械の稼働時間をカットし、CO2の排出量削減だけでなく、周辺の生活環境で発生する負荷を減らせる。
また、「FUNC-RES工法―杭引抜き孔の再生改良工法―」として、日本建築総合試験所で2020年4月に建築技術性能証明を取得し、工法と撹拌装置の特許を出願中だ。
今後は、既存杭を撤去して新設杭を打設する際に、既存杭が新設杭に干渉することが想定される案件で提案し適用していく予定だ。
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