タワークレーン3次元自動誘導システムの精度と作業効率を高めるシステム、戸田建設:ICT
戸田建設は、タワークレーン3次元自動誘導システムの精度と作業効率を向上させる新たなシステムを開発した。
戸田建設は、タワークレーン3次元自動誘導システムの精度と作業効率を向上させる新たなシステムを開発したことを2022年5月9日に発表した。
目標は鉄骨・PC工事の自動化
これまでのタワークレーンによる揚重作業では、夜間や悪天候時には、作業の安全性確保に困難を伴う。一方、国内では、少子高齢化などで技術者が減少し、安全かつスムーズに運転できる熟練した技術を持つオペレーターが少なくなるといった問題がある。
そこで、タワークレーン3次元自動誘導システムの精度と作業効率を向上させるシステムを開発した。
新システムは、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、各種センサーと高感度カメラで、タワークレーンで吊り上げた吊荷の位置、方向、姿勢と吊荷の振れを把握・制御し、状況に応じ安全かつ効率的な方法で吊荷を指定の位置に自動的に誘導する。加えて、従来は作業の安全性確保に多くの手間と時間を必要とする夜間や悪天候時でも、安全かつ正確なタワークレーンの自動運転ができる。
具体的には、搭載した各種のセンサーで取得した情報を用いて吊荷の姿勢や揺れの制御、玉掛払しなどを行う「コアコントロールユニット」と、このユニットで得た情報を収集し、各種端末で表示・制御するための「コアコントロールシステム」で構成されている。
コアコントロールユニットとコアコントロールシステムの2つが連動することで、タワークレーンや吊荷の状況をリアルタイムに把握し、従来より精度良く、かつ高効率で指定の位置へ誘導することが可能。
コアコントロールユニットには、これまでになかった新たな荷振れ制御システムも備えている。ユニット内にあるモーションセンサーは、吊荷の振れを検知すると、吊荷の振れる方向(速度)とは逆の向きに推力が発生するように、ダクテッドファンと呼ばれる推進器が稼働し、吊荷の振れを自動で抑えられる。
これにより、従来はオペレーターの技量に依存していた荷振れ制御を実現する(足利大学仁田教授との共同研究/特許出願中)。
戸田建設は、2020年度に実現場でシステムの試行を開始し、2021年度は実証試験でその有効性を確認した。さらに、同社が開発した自動鉄骨計測・建入れシステムと仮ボルト不要接合工法「ガチャントピン」などの技術と組み合わせることで、鉄骨・PC工事の自動化を目指す。
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