西松建設がGNSSとCIMで、ダム建設工事のケーブルクレーン自動運転技術を開発:CIM
西松建設は、ダム工事を対象に、GNSS測位技術でコンクリートバケットの位置を取得し、CIMモデルと連携させることで、ケーブルクレーンを自動運搬するシステムを開発した。既に実現場での堤体工で試験運用を開始しており、コンクリート打設工程の時間短縮につながると期待されている。
西松建設は2021年3月31日、ダム現場でのコンクリート打設の作業時間を短縮する「ケーブルクレーン自動運転システム」を開発したと発表した。
手動運転との比較で、約10%のサイクルタイムを短縮
ケーブルクレーン自動運転システムは、コンクリート打設時にその都度、遷移する打設位置やバケット積載重量の変化に応じて、運搬の軌道や速度を変化させることで、最適化された自動運転を実現する。導入メリットとしては、打設位置へ高精度に到達し、バケットの振れも自動で抑え、柱状打設へ適用した場合は、クレーン運転士が目視確認できない箇所でも安全かつ迅速にバケットを運搬して開放するため、作業時間の短縮や堤体工の生産性向上がもたらされる。
なお、現場への適用は、2020年3月から国土交通省 九州地方整備局発注の立野ダム建設(一期)工事で、堤体工での試験運用を開始している。
西松建設では、CIMやICTを組み合わせた「i-Construction」をダム堤体工でも目指しており、今回はその一環として、ケーブルクレーンを使用したコンクリート打設の自動化技術開発に取り組んだ。
現場での実用化に成功したケーブルクレーン自動運転システムは、準天頂衛星「みちびき」などのGNSSから受信した信号を利用し、コンクリートバケットの位置を測位して、ダム堤体のCIMデータと連携させ、目標位置となる打設点までの運搬を自動制御する。システム構成は、タブレット端末で自動運転の目標位置となるコンクリート打設点を指定する「堤体打設オペレーティングモード」、指定した打設点に向けてケーブルクレーンがコンクリートバケットを自動で運ぶ「自動運転モード」、打設状況を事務所からリアルタイムで確認して各種打設データの蓄積と管理を行う「統合管理ディスプレイ」の3つのアプリケーションから成る。
このうち、堤体打設オペレーティングモードは、タッチパネル上に表示されたダム堤体の平面図上で、次の打設点を指定する。平面図は、位置情報を活用しているため、打設点ごとに3次元座標データを入力する手間が省略され、誤入力を防げる。
自動運転モードは、GNSS測位でバケット位置を0.1秒ごとに計測し、バケットの挙動をリアルタイムで取得しながら、目標位置(打設点)に向けて自動でクレーンを運転。手動運転との比較では、約10%のサイクルタイムを短縮する。
統合管理ディスプレイは、デジタルサイネージによる打設状況のリアルタイム確認を可能にし、蓄積データをCIMモデル上に付与し、日々の打設データを管理し、工事関係者間で共有できる。
今後の展開で、西松建設は、立野ダム堤体工での試験運用を通して、システムの改良を進め、他のコンクリートダム工事へ展開していくとしている。
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