フジタが坑内でドローンの自律飛行を実現するシステムを開発、BIM/CIMとも連携可能:製品動向
フジタは、センシンロボティクスと共同で、屋内などの環境でも安定したドローンの自律飛行を実現する「トンネル坑内自動巡視ドローンシステム」を開発した。トンネル坑内自動巡視ドローンシステムは、センシンロボティクスが開発した飛行制御技術とLiDARを使用したドローンを使用しており、非GNSS環境かつ暗所のトンネル坑内にでも安全で安定した自律飛行が行える。
大和ハウスグループのフジタは、センシンロボティクスと共同で、GNSS※1が受信できない屋内などの環境でも安定したドローンの自律飛行を実現するとともに、工事進捗の情報収集を自動化する「トンネル坑内自動巡視ドローンシステム」を開発したことを2022年4月14日に発表した。
1人による1回の巡視点検時間を1時間カット
これまで建設現場でのドローン活用は、GNSSが無いとはあらかじめ設定されたルートを自動/自律飛行することが困難で、ドローンの操縦に高度な操作技術が必須であることから、主に屋外での使用に限定されていた。加えて、暗所で機械設備などの障害物が多く、大型重機が動くトンネル工事では、巡視可能な時間も限られるため、効率的な点検技術が求められている。
そこで、フジタは、センシンロボティクスとともに、トンネル坑内自動巡視ドローンシステムを開発した。
トンネル坑内自動巡視ドローンシステムは、熟練オペレーターの介在無しで、ドローンの安定した自律飛行と安全機能(障害物検知)を実現しているだけでなく、GNSSが受信できない屋内や暗所でもLiDAR※1により自機位置を認識しながら、経路の指定不要でトンネル坑口から切羽(きりは)までをドローンが自律飛行可能。これにより、高所を含む坑内における毎日の施工状況を短時間で網羅的に記録する。
※1 LiDAR:Light Detection And Rangingの略称で、レーザー光の照射と反射時間から物体の距離と方向を計測する技術。
さらに、ドローンで撮影した膨大(秒速1メートルで飛行時に50センチごとに1枚撮影)な360度カメラ画像をモニタリングシステム「OpenSpace※2」で処理することで、BIM/CIMモデルや時系列画像データとの連動比較が行えるトンネル坑内のVR映像をAI技術により約10分で自動生成し、クラウド上での情報共有を行える。
※2 OpenSpace:OpenSpace(Open Space Labs)が提供する360度現場モニタリングシステム。
今回のシステムでは、1人による1回の巡視点検時間を1時間減らし、データ整理時間を80%低減する。また、VR空間での巡視やVR空間上でのコメントとデータの添付による点検・検査に対応し、受発注者間にて非接触で高度な情報を迅速に共有することができ、品質管理や維持管理記録の作成でも役立つ。
大林組では、徳島県小松島市で施工中の「令和元−4年度横断道羽ノ浦トンネル工事」で、トンネル坑内自動巡視ドローンシステムを試行し、トンネル掘削延長400メートルの区間を約7分でドローンが自律飛行するとともに、搭載した360度カメラで得られた画像から自動生成したVR空間内でトンネル坑内のBIM/CIMと連動した巡視点検が行えることを確認した。
今後は、自律飛行の高度化とトンネル以外の非GNSS環境への展開とともに、LiDARにより得られた点群データの出来高・出来形管理への活用を推進する。
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