大分県内で低コスト・グリーン水素製造実証プラントの建設に着手、清水建設:産業動向
清水建設は、市川事務所、エネサイクル、大日機械工業、ハイドロネクストと共同開発したグリーン水素製造技術を導入する実証プラントの開発に着手した。
清水建設は、大分県玖珠郡九重町で、地熱とバイオマス資源を活用したグリーン水素製造技術を適用する実証プラントの建設に着手したことを2021年11月30日に発表した。
グリーン水素製造技術による水素の製造コストは1立方メートル当たり24〜38円
水素は利用時にCO2を排出しないクリーンなエネルギー源であることから、脱炭素社会に向け低コストで大規模なグリーン水素製造技術の開発が求められている。
しかし、既に水素は市販されているが、製造過程でLNGなどの化石燃料を改質する必要があり、多くのCO2を排出するため、グリーンではなくグレー水素と呼称されている。一方、再生可能エネルギーによる水分解で水素を製造する技術が開発されているが、製造過程で多量のCO2排出を伴い、かつ製造コストが高止まりしている。
上記の課題を解決するのが低コストのグリーン水素製造技術だ。低コスト・グリーン水素製造技術の特徴は、国内に豊富に存在する地熱とバイオマス資源を活用することで、製造時のCO2排出量を市販水素の10分の1以下とする。製造コストは太陽光などの再生可能エネルギーを活用した水電解水素の3分の1以下に相当する1立方メートル当たり24〜38円に減らせる。
低コスト・グリーン水素製造技術を適用したプラントは、木質チップの炭化炉、炭化物をガス化する改質反応器、水素精製装置から構成される。水素の製造プロセスは、まず炭化炉に投入した木材チップを蒸し焼き状態にして炭化物を生成する。
次に炭化物を改質反応器に投入して水蒸気を追加し、炉の中を800度以上の高温にすることで炭化物と水蒸気を化学反応させ、改質ガスと呼ばれるH2、CO、CO2、水蒸気を含む混合ガスを生産。
続いて、この改質ガスを再び高温で化学反応させてH2の含有量を高めた後、PSAガス精製装置と金属膜水素分離装置で燃料電池用グリーン水素(純度99.999%以上)を抽出・製造する。
プラントでは、水素製造の過程で発生する1070度の高温ガスを熱源とし電力使用量を抑えられ、余剰となる高温排熱(ガス)は地熱発電用水蒸気の追い炊き熱源として売熱可能なことから、水素製造コストを減らせる。高温ガスは炭化炉で副生する燃料ガスやタールを空気燃焼させることで生じる。
今回開発するプラントは、「令和2年度環境省CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の対象になっており、清水建設が環境省から助成金を得て建設するもので、水素製造能力は1時間当たり50ノルマルリューベ。
加えて、竣工は2022年3月末で、3カ月の試験運転期間を経て同年7月からプラントの性能検証を行う。具体的には多様な木質チップを利用できることや製造過程でCO2を発生させないこと、水素製造コストを検証し、2023年3月に環境省に検証結果を報告する。
また、清水建設は、2025年までに、実証事業を通じて取得するノウハウを活用し、大分県や熊本県、鹿児島県といった九州を中心に中小地熱発電所に併設する水素製造実用プラントを複数建設する見込みだ。実用機の水素製造能力は1時間当たり250〜1000ノルマルリューベで、1時間当たりの木材チップ投入量は2トン、地熱水蒸気使用量は1時間当たり0.65トンを想定している。
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