コンクリの製造などで生じるCO2排出量を可視化するプラットフォームを開発、鹿島建設:ブロックチェーン
鹿島建設は、コンクリートの製造・運搬におけるCO2排出量をブロックチェーン技術により見える化するプラットフォームを開発した。プラットフォームは、導入することで、コンクリートを現場で受け入れるまでに各所で排出されたCO2排出量を可視化し、サプライチェーン全体のCO2排出量を顧客に提示できるようになる。さらに、環境配慮型コンクリートの使用を踏まえて、CO2排出削減量をJ-クレジットに変えられる。
鹿島建設は、コンクリートの製造・運搬におけるCO2排出量をブロックチェーン技術※1により見える化するプラットフォームを開発し、社会実装に向けた実証を開始したことを2022年3月29日に発表した。
※1 ブロックチェーン技術:参加者全員がデータを共有する分散型台帳システム。書き込み時のルールに基づき全ての台帳に同じデータが書き込まれる。書き込まれたデータは上書きされず履歴が残るため、透明性が高い。
複数の企業によるCO2排出量の重複計上も防止可能
国内外では、2050年までにカーボンニュートラルを実現するための動きが増えており、さまざまな活動に伴い発生するCO2排出量を見える化することへのニーズが高まっている。建設分野でも、顧客に提供するインフラ・建築物の建設サプライチェーン全体で、CO2排出量の提示が必要となる。
そこで、鹿島建設は、建設サプライチェーン全体におけるCO2排出量の正確な把握・算定を目標に掲げ、初弾として、建設資材の中でも使用量が多量で、CO2排出量が多いコンクリートの製造と運搬時におけるCO2排出量を見える化するプラットフォームを開発した。
プラットフォームは、目に見えないCO2の排出量や削減・固定量を正確に可視化することを目標に開発した。具体的には、コンクリートを構成する各材料の製造から現場打設に至るまで、各サプライヤーの取引情報(配合や運搬数量など)をプラットフォームに取り込むことで、コンクリート製造・運搬に関わるサプライチェーンのCO2排出量を算定できる。
算定に当たっては、真正性や透明性、改ざん防止性を持つブロックチェーン技術を活用して情報管理することで、情報のトレーサビリティーが確保される他、参加企業間で同一情報を共有しやすくなり、複数の企業によるCO2排出量の重複計上も防げる。
さらに、環境配慮型コンクリートの使用に伴うCO2排出削減量をJ-クレジット※2化する際には、データを一元的に管理するプラットフォームを活用することで、スムーズに取得手続きを進められる。
※2 J-クレジット精度:省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量、適切な森林管理によるCO2の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度
今後、鹿島建設は、開発したプラットフォームを活用し、現在施工を進めているプロジェクトのコンクリート製造・運搬で生じるCO2排出量の算定だけでなく、環境配慮型コンクリートの使用に伴うJ-クレジットの創出を実証する。
加えて、予定されている自社プロジェクトへの適用とともに、各サプライヤーの取引情報を取得する方法の自動化で活用し、業界に広く展開していくことで、建設生産活動の継続とCO2排出量削減の両立を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CO2を25%削減する新型コンクリート、価格と耐久性もばっちり
あらゆる建物に利用されるコンクリート。鹿島建設は従来より製造時におけるCO2排出量を25%削減した新型コンクリートを開発した。耐久性やコスト面でも一般的なコンクリートと同水準を保っており、建物の建設時におけるCO2排出量の削減に貢献できるという。 - CCU材料の炭酸カルシウム微粉末を大量混入した高流動コンクリートを開発
鹿島建設は、日本コンクリート工業とCO2を大幅に削減できる環境配慮型コンクリートの共同研究に取り組み、「i-Construction」による作業の省人化とCO2削減を同時に実現する技術を開発した。場所打ちコンクリートにも適用できる。 - 大成建設が「御茶ノ水ソラシティ」に再エネ電力を導入、年間6000トンのCO2を削減
大成建設らは、複合施設「御茶ノ水ソラシティ」の全電力を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えた。今回の取り組みにより、御茶ノ水ソラシティでは、電気購入由来のCO2排出量ゼロを実現し、年間約6000トンのCO2削減を見込んでいる。なお、電気購入由来のCO2排出量ゼロを達成するために、非化石証書(FITトラッキング付き)またはJ-クレジット(再生可能エネルギー由来)を利用する予定だ。 - 日鉄高炉セメントの本社に適用した低炭素型コンクリでJ-クレジットを取得、竹中工務店
竹中工務店は、「J-クレジット制度」を活用し、日鉄高炉セメントが福岡県北九州市で保有する本社ビルで、地下躯体部分のCO2削減に貢献する「ECMコンクリート」に置き換えたことにより、CO2排出削減量の64トン分についてクレジットを取得した。