非GPS環境の屋内でもドローンの自律飛行が実現、「BIM×Drone」の技術検証サービス:BIM×ドローン
アクティオ、竹中工務店、カナモト、センシンロボティクスの4社は、非GPS環境の屋内でもドローンの自律飛行を可能にする「BIM×Drone」の実用化に向けて検証を始めた。BIMモデル上にあらかじめ飛行ルートを設定し、Visual SLAM技術でドローンの自己位置測位と周辺環境を検知しることで、建物内での安定的な自律飛行が可能になる。
アクティオは、竹中工務店、カナモト、センシンロボティクスとともに、BIMを用いたドローンの屋内外自律飛行システムの実証試験を重ね、その成果として2022年2月1日から屋内外自律飛行システムを搭載したドローン「BIM×Drone(ビム・クロス・ドローン)」の技術検証サービスを開始した。
衛星電波が届かない建物内でもドローンの自律飛行が可能に
一般的なドローンは、GPSなどの衛星測位システムで機体位置を測位し、他のセンサーと連携しながら自動飛行するため、屋内や地下、トンネル内部、橋梁(きょうりょう)の下、タンク内部など衛星電波の受信が困難な場所では測位が難しく、誤差が大きくなるといった課題があった。また、非GPS環境で自己位置測位が可能な機体を用いた場合でも、機体の自己位置とマップ上の機体位置を合わせ、直感的なルートを設定できない点がボトルネックとされていた。
3社で共同開発したBIM×Droneは、ステレオカメラで撮影した映像をもとに自己位置推定と環境地図作成を同時に行う「Visual SLAM技術」と、BIMを用いて、BIMモデル上に飛行経路を設定し、衛星電波が届かない建物内でもドローンの安定飛行を実現。屋内の壁や障害物などの特徴をリアルタイムで捉えながら、自己位置を把握して自動飛行する。また、3Dモデルを配置した地図上で、ルート設定や機体位置の表示が可能となり、ユーザビリティが格段に向上する。
機体は、狭小空間でも安定したフライトが可能な日本製の「ACSL Mini」を採用し、運用管理ソフトは、BIMモデルの配置や航路設計を行うプラットフォームとしてセンシンロボティクス「SENSYN CORE(センシンコア)」を用いている。
社会実装に先立ち、2022年2月1日からは、建設中物件の進捗管理業務、大型商業施設などの巡回点検業務での適用に向けて、技術実証サービスの提供をスタート。まずは、BIM×Droneが、ユーザーが想定する運用方法にマッチするのかについて、およそ90万円からの有償で、専用スタッフによる現場視察と技術検証をそれぞれ1日実施し、その後の運用検証では2週間〜1カ月の実際に業務上での運用テストを経て、最終的には屋内ドローンの本格運用までをサポートする。
今回の技術検証の段階では、顧客のBIMデータをもとに現場視察を踏まえた飛行ルートの作成、現場でのテスト、技術検証後にはドローン撮影データの納品や報告会の開催も盛り込まれている。
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