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【第3回】RTK-GNSSが苦手な「屋内」の建設現場で有効な2種類の測位技術建設現場を“可視化”する「センサー技術」の進化と建設テックへの道のり(3)(1/2 ページ)

本連載では、日立ソリューションズの建設ICTエバンジェリストが、建設業界でのセンサー技術の可能性について、各回で技術テーマを設定して、建設テック(ConTech)実現までの道のりを分かりやすく解説していきます。第3回は、RTK-GNSSが苦手とする「屋内」の建設現場で有効な測位技術について用途も交えて紹介します。

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 連載第2回では高精度衛星測位技術について、その特長と建設現場での利用例の一部を紹介しました。高精度衛星測位技術をサポートするデバイスが増えることで、利用シーンの拡大に期待が持てる分野ですが、衛星測位には明確な弱点もあります。本連載の読者はお気付きだと思いますが、衛星測位は測位用衛星システムからの電波を受信できないと実現できません。つまり、上空が開けている場所では良好に利用できますが、建物の中やトンネルなど「屋内」では測位ができないのです。

 そのため、「屋内」での測位を可能にするさまざまな技術が開発されています。技術的には数が多く、全てを紹介することはできません。そこで今回は、「建設現場で利用する」ということを前提とします。

 建設現場では日々、環境が次々と変化するため、常設の電源を確保するのが難しいという制約があり、電源を必要とする受信機やセンサーなどの設置もできません。しかし、そうした場所でも利用可能な2種類の測位技術があります。


屋内での測位を可能にする2種類の技術 Photo by Adobe Stock

「BLEビーコン」を用いた屋内測位技術

 1つ目の技術は、「BLEビーコン」を用いる方法です。2013年に米Appleが「iBeacon」という名称でBLE(Bluetooth Low Energy:近距離無線通信技術の拡張仕様の1つで、低消費電力で通信が可能なもの)ビーコンの規格を発表しました。iBeaconから発信した電波をスマートフォンが受信したときに、メッセージ・クーポン・ポイントなどが配信できる仕組みですが、同時にBLEビーコンの位置が既知であれば、その電波を受信したスマートフォンはそのビーコンの近くにいることが分かり、位置を特定できます。

 その位置の把握方法は、BLEビーコンから発信される電波をスマートフォンで受信し、その電波強度からビーコンまでの距離を推定することでおおよその位置を求めるものです。複数のBLEビーコンを配置した場合は、スマートフォンは一番強い電波を受信したビーコンの近くにいると判定します。

 この手法では、精度の高い位置(座標)の把握ではなく、スマートフォンがどのあたりにいるかという情報(エリア)が得られます。このため、位置精度を上げるためには、ビーコンの配置粒度を密にすることになります。さらに精度を高めるには、3辺測量を用いて、3つ以上のビーコンからの距離からその位置を一意に求める方法もあります。この場合、座標を求めることができますが、BLEの電波強度は距離が離れるほど弱くなるという性質があるため、周囲の環境やマルチパス(反射波により複数経路の電波が多重に受信される現象のこと)の影響などによって、ぶれが大きくなり、サブメーター級の1メートル以内の精度までは期待できません。

 BLEビーコンは低消費電力で、年単位で電池が持つものがありますので、常設電源は必要ありません。また、小型で軽量であることため、位置を把握したい場所に設置するのが容易というメリットがあります。おおよその位置を把握したいが、動線把握までは不要といったニーズに対し、気軽に導入できるのが特長です。

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