清水建設らが水素エネルギー利用システムの実証運用を福島県で実施、53%のCO2削減:導入事例
清水建設と産業技術総合研究所は、福島県郡山市の郡山市総合地方卸売市場内で、2019年7月〜2021年7月に、建物附帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」の実証証運用を行い、電力由来のCO2排出量を未導入時と比べて53%削減することを確認した。Hydro Q-BiCは既にに、2021年5月に竣工した清水建設北陸支店(石川県金沢市)の社屋内に実装され、実用化のステージに進んでいる。
清水建設と産業技術総合研究所は、福島県郡山市の郡山市総合地方卸売市場内で実証運用を進めてきた建物附帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」のCO2削減効果について、2019年7月から2021年7月まで連続運用した結果、電力由来のCO2排出量を未導入時と比べて53%減らせることを確認し、実証運用の概要を同年12月24日に発表した。
太陽光発電のみを導入した場合と比べてCO2削減量が約21%アップ
両社が共同開発したHydro Q-BiCは、水素エネルギー蓄電設備で、太陽光発電の余剰電力を利用して水素を製造・貯蔵し、必要時に抽出して電力に変換する。特徴は、水素の貯蔵に常温常圧で水素を吸蔵・放出できる独自の水素吸蔵合金を利用している点。水素吸蔵合金は、着火しても燃焼せず、非危険物として使えるため、安全かつコンパクトに水素を貯蔵し、一般施設にも展開しやすい。
今回の実証運用では、郡山市総合地方卸売市場の管理棟にHydro Q-BiCを適用し、日常的な運用を通じて、システム導入に伴うCO2削減効果の定量評価を行った。
管理棟に導入したシステムは、総出力64.5キロワット(kW)の太陽光パネル、製造能力が1時間当たり5ノルマル立法メートルの水素製造装置、水素貯蔵量が80ノルマル立法メートルの水素貯蔵装置、出力3.5kWの燃料電池4台、電力貯蔵量10kWhの蓄電池2台で構成される。各装置の運転を清水建設が開発した建物エネルギー管理システム(スマートBEMS)で一元的に監視・制御することで、エネルギー利用の最適化を図った。
システムの運用にあたっては、6時〜18時に太陽光パネルで発電した電力のうち、建物で直接使えない余剰電力(最大30kW)を利用し、1時間に最大5ノルマル立法メートルの水素を製造・貯蔵。管理棟の電力使用ピーク時間帯の朝5時〜9時に、水素を使った燃料電池からの発電と蓄電池からの放電により、最大34kWの電力を太陽光パネルの発電に上乗せして管理棟に供給し、ピークの電力を抑えた。
その結果、電力由来の年間CO2排出量をシステム未導入時の想定値より約53%、太陽光発電のみを導入した場合と比べて約21%、CO2の削減量が多いことを確かめた。
また、オンサイトで創出した水素に加えて、外部から持ち込んだ水素の貯蔵・活用技術の実証にも取り組んだ。具体的には、加熱・冷却性能に優れた急速充填用タンクを新規開発し、産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)で製造したCO2フリー水素の輸送・充填試験を実施。
その結果、定格100ノルマル立法メートルの水素充填を1時間程度で完了させることに成功した。これにより、水素の製造場所が離れている場合でも、持ち込み水素による蓄エネルギーが可能になり、さらなるCO2削減を実現可能なことが判明した。
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