特定の人にアナウンス音声をピンポイントで放射する新システム、清水建設:製品動向
清水建設は、立命館大学の西浦敬信教授や順天堂大学大学院の平澤恵理教授と共同で「局所音場制御システム」を開発した。局所音場制御システムは、超指向性スピーカーと、スピーカーからの放射音を任意の方向に反射させる音響調整板で構成される。利用者は、音響調整板の設置方向などを調整することで、特定の領域に限定してアナウンス情報を伝達できるようになる。今後は、局所音場制御システムの適用実証を進めながら、ニーズを調べる見通しだ。
清水建設は、立命館大学の西浦敬信教授や順天堂大学大学院の平澤恵理教授とともに、複数のアナウンス音声が混在する室内空間で、必要な人に必要な音声情報を選択的に提供できる「局所音場制御システム」を開発したことを2021年12月13日に発表した。
新型コロナウイルスワクチン職域接種会場内で性能を確認
多くの人が利用する病院施設では、施設利用者を誘導する各種アナウンスが同時に放送される場合がある。現在は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、感染防止対策に関する諸注意を施設利用者にアナウンスする機会も増えている。しかし、これらの音声が同一空間内で混在すると特定の情報を必要な人に届けることが困難になる。
上記の問題を解消するための対策として、スピーカーの配置や設置数を工夫したり、間仕切りを配置したりするケースもあるが、明瞭な音声情報を選択的に利用者に提供するのは難しい。そこで、清水建設は局所音場制御システムを開発した。
局所音場制御システムは超指向性スピーカーと音響調整板で構成される。超指向性スピーカーは、広く空間に音声を拡散させる汎用スピーカーとは異なり、放射音がビーム状に広がるため、一定の範囲に絞って音声を届けられる。
スピーカー音声を反射させる音響調整板は、複数の曲面パネルを並列に配置した反射構造体で、曲面パネルの配列を横向きにすると反射音の指向性が持続し、縦向きにすると反射音に拡散性を付与することができる。新システムの利用時には、アナウンス音声を届けたい領域に応じて音響調整板の設置角度やパネルの配列方向を調整し、スピーカーの音波が送る方向・範囲をコントロールする。
新システムの音場制御機能について検証するために、清水建設は、東京都文京区の順天堂大学医学部附属順天堂医院に開設された新型コロナウイルスワクチン職域接種会場内で新システムを試験適用した。
その結果、明瞭なアナウンス音声を設定領域に限定して来場者に届けられ、領域外への音漏れも最小限に抑えられることが分かった。
なお、システムの開発にあたっては、清水建設が施設空間内の音場制御手法や音響調整板の開発を担当し、立命館大学が超指向性スピーカーのデバイス制御を担った。
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