パナソニックがアブラヤシ廃材の「再生木質ボード化技術」を開発、建材でも展開:製品動向(2/2 ページ)
パナソニック ハウジングシステム事業部は、アブラヤシ廃材の「再生木質ボード化技術」を開発した。今後は日本国内家具市場への導入に取り組む。具体的には、2022年春に、国内家具製造業者へ再生木質ボードを提供し、大塚家具、東京インテリア家具と協働して受容性検証を開始する。2023年度以降は、建材市場へも用途を拡大し、さらに海外市場へと展開していく予定だ。
「改質技術」と「品質安定化技術」で中間材化
そこで、パナソニック ハウジングシステムは、科学技術振興機構が主催する「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の研究課題「日本とマレーシアの2国間プロジェクト」に参画し、アブラヤシ廃材の有効活用策として再生木質ボードの開発に取り組んできた。こういった取り組みにより、アブラヤシ廃材の再生木質ボード化技術を開発した。
アブラヤシ廃材の再生木質ボード化技術は、木質素材の「改質技術」と「品質安定化技術」で構成される。改質技術では、独自開発した特殊洗浄技術で、アブラヤシ廃材全体のうち17%を占めるデンプンと無機成分を除去しつつ、摩砕と乾燥を行う。品質安定化技術では、部位ごとに高さや径が異なるアブラヤシの組成を制御するとともに、長繊維を作る。
具体的には、アブラヤシ廃材の幹が内包する不純物(デンプンと無機成分)を洗浄工程で除去し、抽出した長繊維を圧縮成形することで中間材化する。中間材化したボード原料は、従来の再生木質ボード原料と比べ、輸送性と保管性に優れ、遠隔地の既存木質ボード工場でも従来の設備で生産可能。
足立氏は、「木質ボードの消費率はアジア圏が約50%を占めており、そのうち半分は家具業界が利用していることを考慮し、当社は、大塚家具や東京インテリア家具、家具メーカーといった企業とともに、アブラヤシ廃材の再生木質ボード化技術を用いた事業の検証を2022年度に開始する。事業検証では、環境配慮製品としての需要や一般消費者の評価を国内市場で調べるために、中密度繊維板の代替品として、サイズと厚みを工夫した限定仕様でアブラヤシ廃材の再生木質ボードを訴求する。その後、パーティクルボード用中間材の代替品としてアブラヤシ廃材の再生木質ボードを北米と欧州の建材マーケットで展開する見通しだ」と展望を語った。
なお、アブラヤシ廃材を使用した再生木質ボード化技術の開発は、パナソニック ハウジングシステム事業部が2021年11月2日に開催したラウンドテーブルで公表した新たなチャレンジ「くらし設備建材ソリューション」「くらしテクノロジーイノベーション」「くらし価値イノベーション」のうち、くらしテクノロジーイノベーションに位置する。
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