“施工から維持管理まで”一気通貫でBIM連携する「FMシステム」を開発、東急建設:FM
東急建設は、設計図書をBIM化した「BIMファーストモデル」を2021年度から一定規模以上の建築作業所に導入を進め、着工前の施工計画の検討や作業所での管理など、設計・施工のBIM連携に取り組んでいる。このたび、さらに前進する形でファシリティマネジメント(FM)の領域でもBIMを活用するべく、設備機器の管理用台帳を扱う「FMoTクラウド」と連携を図ったことで、施工BIMモデルで各種情報を確認しながら設備の維持管理が可能になった。
東急建設は2021年11月1日、施工段階で作成するBIMをファシリティマネジメント(FM)でも活用するため、維持管理業務で必要となる「設備機器台帳」を作成するシステムを開発したと発表した。
設備設計事務所のさくらドラフトワークスとBIM×FMを共同検証
設備機器台帳は、保全管理台帳やプラント管理台帳とも呼ばれ、ファシリティマネジメントに欠かせない施設・設備を管理するための書類一式。
維持管理業務は一般的に、建物引渡し時に建設会社から受領した竣工書類や図面などをもとに、建物管理者が情報を整理して設備機器管理用の台帳を作成している。だが、台帳は手作業で作るため、煩雑で手間がかかるのが悩みの種だった。
一方、BIMには、デジタル化された建物のさまざまな情報(I=Information)が属性情報として盛り込まれており、ファシリティマネジメントの領域でも活用が見込まれている。しかし、現状では、建設会社と建物管理者との連携が十分ではないため、デジタル情報の連続性が途切れていた。
そこで、東急建設は、設備設計事務所のさくらドラフトワークスとファシリティマネジメントでのBIM×FM活用を共同検証。子会社の東急リニューアルがサービス提供するファシリティマネジメントソフト「FMoTクラウド(エフモットクラウド)」とBIMモデルを連動させることで、効率的に設備機器台帳を作成できるシステムを開発した。
システムでは、NYKシステムズ製BIMソフト「Rebro Viewer」と併用することにより、維持管理の業務で確認したい特定の設備機器をRebro Viewer上で表示させる機能を実装した。現地調査でも把握しきれない“隠蔽部”までが3Dモデルで確認できるようになり、改修計画の検討や現地調査時間の削減が図れるようになった。
東急建設では、BIMを建築事業のプラットフォームとして位置付けており、建物維持管理だけでなく、建物ライフサイクル全般でデジタルシフトを加速し、新たなビジネスモデルの構築、サービス提供を目指していくとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- JFMA調査研究部会のFM探訪記(1):【新連載】FM探訪記:調査研究部会とコロナ禍でも元気な「こころとからだのウェルビーイング研究部会」
本連載では、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA) 専務理事 成田一郎氏が「JFMA調査研究部会のFM探訪記」と題し、JFMA傘下で、マネジメントや施設事例、BIM×FMなどの固有技術をテーマにした合計18の研究部会から成る「調査研究部会」での研究内容を順に紹介していく。第1回は、調査研究部会の全体概要と、2018年に新設した「こころとからだのウェルビーイング研究部会」について解説する。 - いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(12):【最終回】発注者のニーズを知り、要求条件をまとめる(下)−ブリーフィング/プログラミングの重要性−
本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメント(FM)に関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、要求条件を伝える方法として、プログラミング/ブリーフィングの在り方について、モデルルームのコンセプトに詩を用いた事例を交えながら解説する。 - 電子ブックレット(BUILT):竹中工務店の設計・施工がシームレスにつながる“オープンBIM”「Building Together Japan 2020」注目講演まとめ
ウェブサイトに掲載した記事を印刷しても読みやすいPDF形式の「電子ブックレット」にまとめました。無料のBUILT読者会員に登録することで、ダウンロードすることができます。今回のブックレットは、グラフィソフトジャパンの製品やソリューション、ユーザー事例などを幅広く紹介したオンラインイベント「Building Together Japan 2020」で注目を集めた講演のまとめです。 - いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(11):発注者のニーズを知り、要求条件をまとめる(上)−利用者満足度調査・POEとは−
本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメント(FM)に関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、FMを実践する上では欠かせない手法「POE」について、その重要性を説く。 - いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(10)::最新のFMに触れる、そして学ぶ方法(下)−資格試験を受ける。部会活動に参加する−
本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、会場を用意して開催していたこれまでのファシリティマネジメントフォーラムと、今回初の試みとなったオンライン版との比較、さらに認定ファシリティマネジャー資格の有用性を解説する。 - BIM:スターツCAMが“鉄筋BIM”を自動加工機にダイレクト連携、1月から現場で運用
スターツCAMは、独自に運用するBIMのプラットフォーム「BIM-FM PLATFORM」で、鉄筋工事を対象に、BIMデータを鉄筋自動加工機械へダイレクトに連携する実証実験を完了し、新築建設現場への導入を開始した。 - いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(9):最新のFMに触れる、そして学ぶ方法(上)−Webセミナーに参加する−
本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、JFMAが毎年開催している日本ファシリティマネジメント大会(通称:FMフォーラム)が2021年2月17日に開幕することを受け、合計70から成るセッションの概要を紹介する。