アッシュクリートを福島第一原発の津波対策工事に適用、10万トン以上の石炭灰を活用:導入事例
安藤ハザマでは、石炭灰を使ったアッシュクリートの製造技術を開発して以降、さまざまな現場で適用し、2021年3月末時点で、162.3万トン以上の石炭灰を有効利用している。現在は、福島第一原子力発電所で、津波対策の一環として、「1F 日本海溝津波対策防潮堤設置工事(材料製造工事)」でアッシュクリートを適用する計画を進めている。
安藤ハザマは、独自のアッシュクリート※1を福島第一原子力発電所の津波対策工事に適用し、これまでに10万トン以上の石炭灰を有効利用したことを2021年10月8日に発表した。
※1 アッシュクリート:原材料に石炭灰、セメント、石こう、水(海水)を使用した硬化体。石炭灰は、炭種や燃焼条件によって品質のばらつきが大きいものの、アッシュクリートでは、幅広い流動性の調整が可能となる最適含水比を基にした配合設計と製造管理技術によって、安定した品質の提供を実現する
専用プラントは日本海溝津波対策防潮堤設置工事でも活用
石炭灰は、火力発電所で石炭を燃焼させた際に発生する副産物で、多くが、セメント・コンクリート、土木・建築分野で有効利用されている。しかし、社会情勢の変化に対応するために、さまざまな企業が、既存の利用方法に依存しない新たな活用方法を検討。
上記のような状況を踏まえて、安藤ハザマは、石炭灰の活用に1980年代に着手し、現在のアッシュクリートを1990年代に開発し、展開している。
また、福島第一原子力発電所では、津波対策として行った「1F メガフロート津波等リスク低減対策工事(材料製造)」に対し、敷地内に設置した専用プラントで、アッシュクリートを活用した人工地盤材料を作成して材料供給をしてきた。1F メガフロート津波等リスク低減対策工事では、メガフロートをマウンドへ着底したことで津波のリスクを低減した。
今回の工事で使用した専用プラントは、敷地内で行われる防潮堤設置工事でも引き続き活用する。防潮堤設置工事では、補強土壁工法「テールアルメ※2」を適用し、テールアルメ内の盛土を通常の土ではなく、防潮堤に近いプラントで製造したアッシュクリートとすることで、求められる多量の資材調達を容易にし、施工を円滑に進める。
※2 テールアルメ:盛土内に帯状の鋼製補強材を層状に敷設して、土と鋼製補強材の摩擦効果によって強固な補強盛土を構築する補強土壁工法
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