既打設コンクリート端部とセントルの接触を可視化する帯状センサーを開発、戸田建設ら:山岳トンネル工事
戸田建設とムネカタインダストリアルマシナリーは、山岳トンネルの覆工コンクリート端部に生じるひび割れや角欠けを防ぐ帯状センサー「セッテンミエルカ」を開発した。セッテンミエルカは、覆工コンクリート全周にわたってセントル(覆工コンクリート打設用の移動式鋼製型枠)と既に打設した覆工コンクリートとの接触を覆工コンクリートをすることが可能。これにより、セントルの接触を確実に発見し、押し付けに起因するひび割れや角欠けを防止する。戸田建設は現在、福島県で施工中の「福島県博士トンネル工事(昭和村側工区)」でセッテンミエルカを適用し、有効性を確認した。
戸田建設とムネカタインダストリアルマシナリーは、山岳トンネルの覆工コンクリート端部に生じるひび割れや角欠けを防止する目的で、帯状センサー「セッテンミエルカ」を開発したことを2021年9月28日に発表した。
接触検知の記録を次回打設にフィードバック可能
通常の現場では、若材齢※1の既打設コンクリート端部にセントルをラップさせてセットするために、セントルセット、打設、脱型の過程で、目測の誤り、ジャッキ操作ミス、セントルの移動を原因として、ラップ部に押し付けによるひび割れや角欠けが生じてしまうケースがある。
※1 若材齢:コンクリートがまだ十分硬化していない期間
ひび割れと角欠けを防止するために、従来は点で接触を監視するセンサーを用いていたが、一般的にセンサーは4カ所の設置にとどまり、センサーを配置していないエリアで生じた接触を検知できない問題があった。
そこで、戸田建設は、帯状センサーのセッテンミエルカを開発した。セッテンミエルカは、衝撃緩衝ゴムに接触検知部を内蔵した機構となっており、ラップ部の全周に設置することで、接触をセンシングするとともに、過剰な押し付けを未然に防ぐ。
全長は20メートル前後だが、センサーの全長および接触検知部の長さはセントル周長に合わせて任意に変えられる。厚さは約4.5ミリで、幅は約50ミリの帯状でセントル全周の曲線形状に追従して取り付け可能。導電式の接触検知部は、長さが約1.0メートルで、センサーの20カ所に区分けして配置されている。
さらに、センサーで取得した情報を取り込むデータレコーダーの管理画面に表示される20カ所の検知区間では、接触を感知した区間が緑から赤色に変化する。接触を感知した際には、回転灯とアラームで周知する他、接触した検知部と接触時の時刻をデータレコーダーに残す。記録はUSBメモリに出力しPC上で確かめられる。
セッテンミエルカのメリットは、セントルセット、打設、脱型に至る全てのプロセスで発生する接触を見える化する点。また、セントルセット、脱型時に接触を検知した時は、ジャッキ操作によってセントル位置を調整し、打設時に接触を感知した場合は、打設速度や左右打設高さの調整を行うことで、押し付けひび割れを防止する。そして、接触検知の記録を次回打設のフィードバックに使える。
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