建物設備を制御しつつ荷物を届ける自律移動の配送車を開発、清水建設:ロボット
清水建設は、建物内の配送業務を効率化する「自律配送車」を開発した。自律配送車は、ユーザビリティの高い荷受けと荷降ろしの機構や自動配送ルーティング機能、建物設備との連携機能を備えた自律走行ロボット。特徴は、走行経路上のエレベーターや自動ドアを制御しつつ、発送者が積んだ荷物を配送先まで送り届けられる点。今後、同社では、実施設での試験運用を通じて、自律配送車のUIや走行性能のブラッシュアップを図り、オフィスビルなどの館内配送サービスへの適用を目指す。
清水建設は、荷受けから荷降ろしまでの館内配送プロセスを無人化できる「自律配送車」を開発したことを2021年9月10日に発表した。
ロボットが効率的な配送ルートを自動生成
国内の一部企業では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や人手不足への解決策として、自動走行ロボットを活用した館内配送サービスの実用化に向けた技術開発を推進している他、建物設備との連携機能を備えたロボットの自律走行制御技術に関して、実証実験を行っている。
しかし、発送プロセスを効率化するUser Interface(ユーザーインタフェース、UI)や走行時のステータス通知機能など、配送サービス実装時のUser eXperience(ユーザーエクスペリエンス、UX)を考慮したロボット開発は進んでいない。
そこで、清水建設は、「屋内走行」「建物連携」「UX」の機能を持つ館内配送サービスロボットとして今回の自律配送車を開発した。
自律配送車の利用手順は、まず、車体側面の開口蓋を押し上げ、収納スペースに内蔵したカメラ付き荷物登録画面で、荷積みUIを起動させる。続いて、収納スペースに荷物を積み込み、荷積みUIに荷物の伝票を2次元バーコードで読み込ませ、荷物を積み込んだ順番とそれぞれの配送先を車両に認識させて、ロボットに効率的な配送ルートを自動生成させる。
上記の発送手続きが完了後、利用者が開口蓋を引き下ろすと、車両が無人走行を開始し、走行経路上に現れる自動ドアの開閉やエレベーターの昇降を都度制御しつつ各配送先に荷物を送り届ける。そして、車体側面に装備した大型ディスプレイで、周囲の在館者に車両の稼働状態を示すことで、円滑な走行と配送を実現する。
車体の開発に当たっては、オフィスビル内での走行を想定し、車体、荷室サイズ、荷積みと荷降ろしの機構、走行状態を表示するディスプレイなどの最適化を図った。また、建物連携機能は、清水建設の建物設備とロボット連携基盤(自動運転プラットフォーム)をベースに構築。さらに、屋内走行の機能開発では、自動配送ロボットの社会実装に向けた研究開発を進めているパナソニックと協業し、同社の車両管理システムと自律走行技術を採用した。
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