クラボウと竹中工務店が2022年度中に3Dプリンティング建築物の施工を目指し、共同研究契約を締結:3Dプリント
クラボウは、2021年に発表した建設向けの3Dプリンティング事業で、竹中工務店と共同研究の契約を結んだ。クラボウは、建設用3Dプリンティング事業をさらに加速させるために、BIMなどの建築生産プロセスとの連携や3Dプリンタの特性を建築物の設計に組み込む必要があると見ており、これまでにさまざまな関連分野の企業との連携を検討してきた。そうした中で、事業構想と考えが一致した竹中工務店と、建設用3Dプリンタを活用した新たな建築工法の開発を視野に入れ、共同で技術革新の基盤を作っていくことに合意し、共同研究契約を締結するに至った。
クラボウ 化成品事業部は、現在取り組んでいる建設用3Dプリンティング事業で、竹中工務店と建設用3Dプリンタの活用に関する共同研究契約を2021年9月27日に締結した。今後は、両社の強みを生かし、建設用3Dプリンタを活用した新しい建築工法の実証実験と技術確立を行い、2022年度中に3Dプリントによる建築物の施工を目指す。
新しい建築工法の確立に向けた建設用3Dプリンタの活用に関する共同研究契約
建設業界では、高齢化により熟練技術者が減少するとともに新しい人材の確保が難しくなっており、深刻な人手不足への対応、次世代への技術継承などが課題となっている。その解決策の一環で、省人化・省力化や生産性向上など、業務効率化を進めるために建設の計画・調査・設計から施工・維持管理までのプロセスで、情報共有や可視化を図るBIM導入など、DXへの取り組みが進んでいる。
まだ人の労力に頼らざるを得ない建設作業現場では、建設用3Dプリンタを活用するための研究が進められているなかで、クラボウでは、2021年5月に建設用3Dプリンティング事業に進出し、DXに対応する建設用3Dプリンタを活用した新しい建築工法などの開発に取り組んでいる。
クラボウの建設用3Dプリンティング事業では、精緻な成形が可能な仏スタートアップ企業XtreeE(エクストリ―)製の建設用3Dプリンタを導入し、建材の開発・生産で30年以上にわたり培った独自のセメント系材料の配合技術や押出成形技術を転用することで、建設業界での3Dプリント技術の開発を行っている。
一方で、竹中工務店もXtreeE製の3Dプリンタ活用の可能性を見いだし、両社でオープンイノベーションによる研究開発に取り組んできた。また、働き方改革やDXなど建設業界を取り巻く環境の変化を受け、竹中工務店では新しい建築生産技術による建設プロセスの革新を目指しており、当社の建設用3Dプリンティング事業の方向性とも一致したことから、建設デジタル革新の基盤の1つとして、新しい建築工法の確立に向けた建設用3Dプリンタの活用に関する共同研究契約の合意に至った。
共同研究では、クラボウが建設用3Dプリンタに関する技術情報の提供、3D造形物などの試作に関する実証試験と改善点のフィードバック、竹中工務店は3D造形物の基本性能の評価と建築物への適用の検討を行う。
今後は、実際の建築物の施工に3Dプリンタの導入を図るべく、両社のノウハウを融合させ、2021年度中に建築物へ適用する際の基本性能について、評価手法を策定し、試作品の製作と評価を経て、基本設計及び実施設計を確定し、翌2022年度には建設用3Dプリンタによる実際の建築物での施工を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
導入事例:手ぶらで現場に来ても次世代の施工管理が実現する分電盤デバイス、清水建設が“未来のヒルズ”新築工事に導入
清水建設は、2023年3月の竣工時に日本一の高さとなる虎ノ門・麻布台プロジェクトのA街区新築工事で、施工管理を効率化する分電盤タイプのデジタルデバイスを計127台導入し、施工管理の効率化をはじめ、超・超高層エリアでのWi-Fi網構築による自動搬送ロボットの自律運行や現場動画の送受信などに役立てている。電子ブックレット(BUILT):田中浩也教授が語るafterコロナの建築3Dプリンティングなど「住宅ビジネスフェア/非住宅 建築フェア/マンションビジネス総合展」講演まとめVol.1
住宅・建築業界向け最新の資機材やサービスが集結した「住宅ビジネスフェア/非住宅 建築フェア/マンションビジネス総合展」の会期中に、注目を集めた講演のまとめた。3Dプリント:3Dプリントは建設業界で事業化できるか?クラボウが2024年度10億円の市場開拓に乗り出す
3Dプリンタを建設領域で活用する動きは、海外では先行してコンクリートを積層することで住宅建築や橋梁の造形などといった用途展開が見いだされている。国内では、建築基準法による素材や構造上の縛りがあるため、大手ゼネコンや研究機関での検討は進んでいるものの実用化にはまだ道のりは遠い。そうしたなか、住宅メーカー向けに建築用化粧材を製造しているクラボウでは、フランス製の大型3Dプリンタを導入し、建設業界を対象に3Dプリンティング事業を立ち上げた。セメント系/非セメント系を問わず、新規材料の開発で製作可能なデザインの幅を広げ、土木・インフラ分野などでの提案も図ると同時に、海外市場への参入も視野に入れている。COVID-19:afterコロナ後「絶滅恐竜」にならないための建設DX、日揮HDの「ITグランドプラン」や東芝EVの「全工程BIM活用」
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、一気に進展したここ最近の働き方改革では、各社ともに、在宅勤務やテレワークの導入だけに注目されることが多い。しかし、その先のafterコロナ後の世界では、ワークプレースを柔軟に選択できる“ハイブリッドワーク”が基軸の考えとなり、実現に向けた業務の効率化や自動化といったデジタル変革は、建築やエンジニアリングの分野でも、避けては通れないものになるだろう。オートデスク主催のセミナーから、IDC Japanによるハイブリッドワークの潮流や日揮ホールディングスの工期2分の1を掲げた全社IT推進、東芝エレベータの維持管理段階も含めたBIM活用などの実例から、如何にしてafterコロナの市場を生き抜くか、ヒントを探った。3Dプリント:高さ4.2m曲面形状の柱を「繊維補強モルタル」で3Dプリント、豊洲の現場に初適用
清水建設は、繊維補強モルタル「ラクツム」をマテリアルに使用した3Dプリンティング技術で、埋設型枠となる自由曲面形状の大規模コンクリート柱を製作し、現場に初適用した。調査レポート:世界の建設ロボット市場を調査、市場規模は2027年までに78億ドルに到達を予測
REPORT OCEANは、世界における建設ロボット市場の動向を調査し、マーケットの規模が2020年から2027年までに78億8030万ドルに達することを予測した。Autodesk University 2020:歴史的建造物の調査を高精度に行う“クイックスキャン”、Revit連携でVR展開も
文化財保護法が一部改正され、以前は政府が行っていた歴史的建造物の管理が都道府県や市町村に委ねられることになった。実現には、歴史的建造物に関する管理や活用を市民参加型にする必要がある。レーザースキャナーや写真データを活用した歴史的建造物のデータ化は、将来的な建造物の修繕やバリアフリー化などの情報を共有化するのに有効だ。また、BIMとの連携で、調査や修繕の管理・立案などにも役立つ。住宅ビジネスフェア2020:デジファブの草分け田中浩也教授が提言、afterコロナの建築3Dプリンティングで世界に先駆ける新たな価値
建築用3Dプリンタには大きな可能性が寄せられている。内部構造を自在にコントロールできる3Dプリンタは、通気性や調湿性を持つ建材を容易に作り出せる利点がある。デジタルファブリケーションや3Dプリンティングの可能性に、国内でいち早く着目し、普及啓発に尽力してきた慶応義塾大学 田中浩也教授は、建築3Dプリントと別のテクノロジーを組み合わせることで、新型コロナウイルス感染症の拡大で、一変したwith/afterコロナの社会に対応し、例えば増大するワーケーション需要に応えられるような施設や居住環境を創出して、市場を開拓することも可能だと提唱する。