大林組が洋上風車基礎の性能を実海域で1年検証、優れた支持性能を確認:産業動向
大林組は、同社が開発した洋上風車基礎「スカートサクション」の実証実験を実海域で1年にわたり行い、優れた支持性能と海洋環境に悪影響がないことを確認した。
大林組は、洋上風車基礎「スカートサクション※1」を実海域で1年間にわたり設置することで支持性能と環境への影響を確認したことを2021年8月19日に発表した。
※1 スカートサクション:頂版および頂版から下方に伸びた円筒形の鉛直壁(スカート)で構成されており、スカート内からの排水によって発生するサクション(スカート内が静水圧以下になること)を利用して海底地盤に貫入させる。大型の杭打機などが不要なため、無振動・無騒音で基礎の施工が可能
50年に一度の高波でも変状は発生せず
同社が開発したスカートサクションは、水圧を利用して、洋上風車の基礎を海底地盤に貫入するもので、杭を打ち込む方式のモノパイル構造などでは施工が困難な岩盤が浅部に出現する海域でも強固に固定できる。
さらに、使用終了後はスカート内に水を注入することで、水中に基礎を残すことなく半日で完全撤去可能だ。加えて、水深が40〜50メートルで、風車が14メガワット(MW)以上と大型化した場合でも、その基礎部に採用することで工期とコストを減らせる。
大林組は、以前から実海域でスカートサクションの設置と撤去を実施するなど、現場での実適用に向けて、実証を繰り返してきた。このたび2020年5月〜2021年5月にわたって実海域でスカートサクションを配置し、各季節の波浪条件下での挙動計測や海洋環境への影響をチェックし撤去した。
具体的には、過去に実施した港湾内での載荷試験や実海域における夏季2週間の波浪下での実証試験を経て、今回は、高さが35.7メートルでスカート径が12メートルの試験体を実海域の波浪条件下で冬季間を含む1年間にわたり設置し挙動計測を実施。2021年2月には50年に一度という厳しい海象条件に見舞われたが、大きな変状を生じることなくその支持性能を実証した。
その後、大林組が開発した水中ROV(Remotely Operated Vehicle)「ディアグ」により海洋環境への影響調査を行った結果、基礎が漁礁のような役割を果たし、イシダイをはじめとする沿岸域の海洋生物が集まってきていることが分かった。
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