太陽光利用型植物工場の栽培環境を見える化する実証研究を始動、西松建設ら:産業動向
西松建設とグリーンラボは、太陽光を利用した移動小型植物工場「Veggie」内に配置された植物の栽培状況を簡単に把握することを目的とした実証研究を進めている。
西松建設とグリーンラボは、太陽光を利用した移動小型植物工場に最適な栽培環境を提供するための共同実証研究を開始したことを2021年2月24日に発表した。
工場内の日射量やCO2などの環境パラメータも可視化
農業ベンチャーのグリーンラボは、太陽光利用型植物工場「Veggie」を用いた事業を展開している。Veggieでは従来、工場内に配置された植物の栽培状況を簡単に把握することが難しかった。そこで、同社は、西松建設が2019年5月に開発した環境監視クラウドシステム「OKIPPA_Green」を活用し、工場内の温度、湿度、CO2などを計測する実証を開始した。
共同実証研究では、Veggieの縦型水耕栽培装置で、OKIPPA_Greenを利用し、温度と湿度をリアルタイムに測定することで、適正な栽培環境を構築できるかを検証している他、作物の成長に関わる工場内の日射量やCO2などの環境パラメータも可視化している。
また、リアルタイムに計測される温度と湿度データから飽差を算出し、それを管理指標とした「飽差管理法」も確立する。さらに、Veggieで用いられる縦型水耕栽培装置では、主にバジル生産を行っているが、他の葉物野菜を生産可能かも検討し、栽培作物の多品目と多品種化を目指す。
今回の実証成果をもとに、グリーンラボは、施設園芸農業の栽培環境計測と制御の技術に生かし、太陽光利用型の植物工場での生産量向上を目標に掲げている。西松建設では、地中熱やバイオマス発電の廃熱といった太陽光エネルギー以外のエネルギー源を使用することと、排ガス中から回収されたCO2を用いた施設園芸農業の実証事業を実現し、新領域の事業化を推進する。
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