鹿島の技術研究所「研究棟」がWELL認証とWELL健康安全性評価を取得、感染症対策などが評価:WELL
鹿島建設は、技術研究所本館研究棟での健康とウェルネスに加え、感染症対策への取り組みなどが評価され、WELL認証プラチナコロナ及びコロナ禍を機に新設されたWELL健康安全性評価の認証を取得した。
鹿島建設は、東京都調布市の同社技術研究所本館研究棟で、「WELL Building Standard(WELL認証)」の最高ランク「プラチナ」と「WELL Health-Safety Rating(WELL健康安全性評価)」を取得したことを2021年7月に公表した。
五感に訴えるウェルネス空間「そと部屋」がWELL認証で高い評価
鹿島建設の技術開発拠点となっている技術研究所本館研究棟は、2011年の完成当時から各種環境技術の実証空間としても活用してきた。これまでに、生物の移動経路を考慮した敷地の樹木配置をはじめ、ヒートアイランド現象を緩和するための土壌下部に雨水を貯水した屋上庭園「エバクールガーデン」設置など、地域環境との共生や所員の快適性の向上に取り組んできたという。
今回のWELL認証プラチナの取得にあたっては、オフィスワーカーの健康や知的生産性に配慮した「ウェルネスオフィス」を実現すべく、ウェルネス関連書籍や健康配慮関連ポスターの配備、階段利用促進サインの新設、エルゴノミクス家具の導入、共用部への植栽やアートワーク配置、建物内外での全面禁煙化、パーソナルな温熱快適性の向上などを実施し、所員の健康性向上を図っている。とくに、緑など自然の要素を室内空間に取り込むバイオフィリックデザインに、光や音などの環境制御を融合させた五感に訴えるウェルネス空間「そと部屋」は、先進的な施策と審査で高い評価を受けた。
一方で、コロナ禍での感染症対策や緊急事態での安全配慮を評価するWELL健康安全性評価は、手洗い・消毒サポート、接触機会の削減、安全な洗浄製品の利用、空調フィルター管理、換気運転スケジュールの見直しなどとともに、自然災害、火災、停電の他に感染症やテロ対策を含むさまざまな緊急事態に対する管理計画や事業継続計画を作成したことで、利用者の安全性を確保するための運用改善とみなされ、認証取得につながった。
WELL認証は、人間の「健康」に焦点を置いた国際的な環境評価システム。米IWBI(International WELL Building Institute)により運営され、GBCI(Green Building Certification Inc)が認証を行い、健康とウェルネスに影響を与える多様な機能をパフォーマンスベースで評価する。評価は、空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、こころ、コミュニティーの10個のコンセプトで建物・室内環境を審査し、レベルに応じてプラチナ、ゴールド、シルバーの認証が付与される。
WELL健康安全性評価は、感染症の流行時やその他の緊急事態に、来訪者や従業員などの健康と安全に配慮した施設であることを評価するシステム。2020年6月に、WELL認証から派生して新たに策定され、コロナ禍に伴い、分かりやすいベンチマークとして世界各国で急速に普及している。評価項目は、洗浄及び消毒方法、緊急事態準備プログラム、保健サービスのリソース、大気と水質の管理、利害関係者の関与とコミュニケーションの合計5テーマで構成されている。
鹿島建設では、今回のWELL認証プラチナとWELL健康安全性評価の取得を通じて蓄積されたナレッジをベースに、建物利用者の快適性、知的生産性、健康面、安全性に配慮した空間の実現を積極的に提案していく。
【訂正】初出時、一部会社名に誤りがありました。上記記事はすでに訂正済みです(2021年8月11日11時20分)。
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