コロナ禍だからこそ、オフィスやニューノーマル対応など新たな“FM戦略”を:ファシリティマネジメント フォーラム 2021(1/3 ページ)
コロナ禍によって、テレワークの普及や働く場所の在り方といった社会基盤に変革が起きている。しかし、社会変化に対して、PDCAサイクルで柔軟な対応力を備えるファシリティマネジメント(FM)を活用することで、より良い働く環境や持続可能な開発目標を実現し、ビルやオフィスの資産価値を向上させる機会にもなり得るという。
日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)のFM戦略・企画研究部会は、「ファシリティマネジメント フォーラム 2021(第15回日本ファシリティマネジメント大会、ライブ配信:2021年2月17〜19日/オンデマンド配信:2021年2月22日〜3月1日)」で、「コロナ禍をチャンスに変えるFM戦略」と題する講演動画を公開した。
講演では、日本ファシリティマネジメント協会 FM戦略企画研究部会 部会長を務めるNTTファシリティーズ FMアシスト 代表取締役社長 高藤眞澄氏(※高ははしごだか)とザイマックス不動産総合研究所 吉田淳氏が登場し、コロナ禍のテレワーク推進やニューノーマル行動様式などの影響を概括した上で、現在のピンチをチャンスに変えるファシリティマネジメント(FM)戦略を示した。
高藤氏「安全安心な街づくりへの対応がチャンスに」
まず、高藤氏はコロナ禍の影響について、「昨今は、さまざまな災害に注目が集まっているなかで、新型コロナウイルス感染症も重なり、より一層、安全安心な街づくりへのニーズが高まっている」とした。
その上で、東京都立大学 名誉教授 中林一樹氏が定義した「新型感染症蔓(まん)延期における災害時避難対策と復旧・復興の基本体系」を紹介。中林氏の提言する避難対策に準ずる形で、FM部会でもこれまでのように1カ所の避難所に集中避難するのではなく、地域全体で分散する避難法や避難生活をフォローすることが重視されている。この方向性は、コロナ禍を機にFM戦略を見直すことにも当てはまる。
例えば、テレワークの普及や感染症予防対策、ニューノーマル行動様式などは、東京一極集中と生産性向上を図る千載一遇の機会になっている。従来は難しかったがコロナ禍を受け、オフィスやワーキングプレースの在り方、リスク管理といったFM戦略を立案して、より活性化する可能性がある。
そもそもFM戦略は、「経営戦略」が前提にあり、経営戦略は外部環境と内部環境の分析をベースに立てられる。外部環境は、政治的要素や経済的要素など、実にさまざま。他方、内部環境は、企業・組織が持つ内部の経営資源が相当する。その先に、FMの業務体系PDCAサイクル「FMの標準業務サイクル」があり、経営戦略に従い、ファシリティのFM戦略を立案(Plan)し、統括マネジメントを中心に据え、プロジェクトの実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)して回していくことになる。
コロナ禍のニューノーマル対応を経営戦略として具体的に設定すると、「テレワーク推進」「働き方改革」「業務効率化」「ウェルビーイング」などのテーマが想定される。次のフェーズのFM戦略では、不動産を活用することで企業価値を向上させる「CRE戦略」と、「オフィス戦略」に展開する。具体的には、自社保有の不動産活用をはじめ、自社に求められているワークプレースのベストミックス、テレワーク推進に向けたICT投資やコスト効率化など。
FM戦略をFM標準業務サイクルで運用していくと、統括マネジメント業務との関係の中で、運営維持→評価→改善を経て、基準や指針の見直しというプロセスが生じる。ソーシャルディスタンスを考慮したスペースや収容人数、根本的な必要諸室や面積などのオフィス機能などに関する議論もここに含まれる。「こうしたFMサイクルの一連をどう組み立てて整理していくかということが、オフィス戦略の進め方だ」(高藤氏)。
FMは、従来、多様な環境変化に対応できる追従性や対応性を有する。そのためFMは、人口減少やグローバル化、ICT進化、地球環境保全、災害に対する強靭化など、コロナ禍での変化にも対応し、経営目標からFM戦略の施策という具体的な落とし込みまでをカバーする。
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