ドローンは災害対応にどう役立つか?台風19号と福島県沖地震で見えてきた課題と可能性:Japan Drone2021(3/3 ページ)
2019年の令和元年台風第19号と2021年2月の福島県沖地震時に、福島県南相馬市とテラ・ラボがどのように連携し、災害対応にあたったのかを、南相馬市 市長の門馬和夫氏と、中部大学発ドローンベンチャー企業テラ・ラボ 代表取締役の松浦孝英氏(テラ・ラボ代表取締役)が「Japan Drone2021」のシンポジウムで報告した。両者の説明では、ヘリコプターの弱点を補い、非常時にこそ活躍の場が広がるドローンの災害対応での有効性を提言した。
南相馬市とテラ・ラボ、それぞれの展望
地震後、南相馬市には、事業会社数社と防災協定を結び、防災時に活動しやすい環境を整えるという流れができた。松浦氏は、「通常、われわれは災害現場には立ち入れない。市と防災協定を結び、市の依頼で現場に入って動けるようになることで、ドローン事業者がこれまで以上に重要な役割を果たせるようになる」と評価した。一方で、連携を強化するためには、「撮影や解析の方法、地図情報との結び付け方などについて事前の訓練が必要となる。データ運用法についても行政との連携が大切。協定を踏まえ、人材教育を含め長期的に計画していかなければ」とも語った。
門馬市長は、南相馬市の今後の取り組みについて、「南相馬市全体を社会実験の場としてベンチャー企業に提供し、実用化までの伴走支援をしていきたい」と語った。福島RTFだけでなく、南相馬市の山、川、農地、ため池など、豊富な自然環境を実験場として提供するという。
さらに支援はソフト面にも及ぶ。実験への補助金だけでなく、起業のための出資金、借入金についても、20社ほどのベンチャーキャピタルと協定を結びサポートする。「ベンチャー企業が羽ばたくことで、雇用が生まれる。そして、日本初の新しい技術が南相馬市で誕生し、市民の安全確保につながることは、とてもうれしいこと。企業のチャレンジから成長までをお手伝いすることが、市の復興につながるし、震災でお世話になったことへの恩返しにもなる」と想いを語った。
2021年4月、テラ・ラボと福島県南相馬市と共同提案した実証事業の施策が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト/無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」に採択された。
現在、テラ・ラボは、南相馬市のドローン事業者4社と市とともに、災害時のドローンを活用した被害情報収集・共有のための実証実験を行っている。2019年の台風19号で調査した場所も再調査し、もう一度情報収集しながら、どうすればさらによい情報を得られるかを検証するという内容だ。「平時に大規模な取り組みができることは、緊急時にとても役立つ、災害が発生したときにすぐ、生かせるシナリオを多数用意しておくことは欠かせない」と松浦氏は語った。
今後について松浦氏は、南相馬市で全国の災害対策にあたる消防職員・消防団員の教育や訓練に関連する事業を目指す方針を示した。「南海トラフ巨大震災など、今後の大震災に備えるためにも東日本大震災の知見は絶対に必要。ノウハウを持っている南相馬市だからこそ、新たな取り組み、新たなキーワードが出てくる」。
最後に「これから未曾有の大震災を体験するときに、受け身で震災に飲み込まれるのか、それとも地域住民一人一人が立ち向かい、やれることをやっていくのか」と問いかけ、身近のところで最新テクノロジーを生かすことの重要性を説き、シンポジウムを締めくくった。
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