CLTが構造材の音楽ホールが東京・調布市で竣工、基本設計は隈研吾建築都市設計事務所:プロジェクト
住友林業は、脱炭素社会の実現に向け教育施設や商業施設など非住宅建築分野での木造化・木質化を推進している。このほど、同社と前田建設工業との共同企業体(JV)が東京都調布市で開発を進めていた木造の音楽ホール「桐朋学園宗次ホール」が竣工した。
住友林業と前田建設工業は、東京都調布市で、共同企業体(JV)として開発を進めていた「桐朋学園大学仙川キャンパス第2期工事」で音楽ホール「桐朋学園宗次ホール」が2021年3月19日に竣工したことを同月22日に発表した。
外観は楽器の弦をイメージ
桐朋学園宗次ホールは、木造(一部RC造)地下1階/地上3階建てで、CLT(直交集成板)を構造材とした。建物には、床や壁など平面の構造を屏風(びょうぶ)上に折り曲げ平板の強度を増す構造「CLT折板構造」を採用することで、音響効果を考慮し、スギとヒノキのハイブリッドCLTを現(あらわ)しで壁と天井に使用して、木質感あふれる美しいホールに仕上げた。
建物の基本設計を担当した隈研吾建築都市設計事務所は、コンセプトを「木が織りなす音楽の場」とし、フルオーケストラが演奏できる広い舞台と215の固定客席を備えたホール棟、レッスン室と教室がある教室棟で構成される施設として設計した。
外観は、楽器の弦をイメージし木製ルーバーで囲むデザインを採用した。具体的には、通常木造では建築が難しい大スパンのホールをCLT折板構造のCLT折板面をそのまま仕上げ面とする現しを用いて、構造、防火性、音響が一体的な形状を実現。
外観の木製ルーバーには、断面30×300ミリのスギ集成材を使用し、表面にはオリジナル塗料の「S-100(シリコン系超撥水形塗料)」を塗布。S-100は、木目を生かす半透明の塗料で、高い撥水性と潤滑性による防汚性を持ち、太陽光、風雨、温度変化などに対しても変質や劣化が起きにくく、木の表面を美しく保つ。
今回の施設は、先進性と木の良さをアピールする効果が期待され国土交通省の「サステナブル建築物など先導モデル事業」に採択された。
桐朋学園宗次ホールの概要
桐朋学園宗次ホールは、木造3階建てで、延べ床面積は2392.59平方メートル。所在地は東京都調布市若葉街1-14-1。教室棟は耐火構造で、ホール棟は準耐火構造。建物用途は大学(音楽ホール)。基本設計・監修は隈研吾建築都市設計事務所が、構造・木構造監修はホルツストラが、音響・遮音設計は唐澤誠建築音響設計事務所がそれぞれ担当した。
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