ビルの高層階で大容量のデータ通信を可能にする新システムを発売、古野電気:製品動向
古野電気は、ビルの高層階や地下空間の現場で、大容量のデータを通信可能な環境を構築する無線LANシステム「ウェーブガイドLAN」を開発した。
古野電気は、ビル建設現場向け無線LANシステム「ウェーブガイドLAN」を2021年5月1日に発売したことを同月10日に発表した
電源の設置や各機器の防水・防じん対応は不要
建設業界では、入職者の減少や技能者の高齢化で、人手不足が深刻化している。こういった状況を踏まえて、政府では、IoTで現場の生産性を向上する取り組みを推進している。
現場のIoT活用に関して一例を挙げると、高層ビルの建設現場では、アクセスポイント(AP)やWi-Fiなどを活用し、事務所とネットワークをつなぎ、タブレット端末や監視カメラを使用し現場の状況を見える化して、施工図面や変更指示をリアルタイムに事務所と現場の間で共有するケースがある。しかし、このようにIoTを使う利用者は、スムーズな情報共有を実現するために、大容量のデータを通信可能な環境を必要としている。
上記のニーズに応えるために、古野電気は、無線LANシステムのウェーブガイドLANを開発した。ウェーブガイドLANは、高層ビル建設現場に安定した無線LAN環境を構築するシステムで、建設時に足場として使われる「単管パイプ」を、電波を放射する「アンテナユニット」を接続することで、LANケーブルを各フロアに敷設することなく建物全体に堅牢で快適な無線通信環境を作れる。さらに、アンテナユニット同士をAPボックスで通信接続することにも応じている。
特徴は、各階にアンテナユニットを設置し、その上下に単管パイプをつなぐだけで無線環境を整備する点で、汎用の単管クランプを用いることで簡単に敷設と解体ができる。また、無線LANアクセスポイントやハブなどの機器を配置する必要がなく、電源の設置や機器の防水・防じん対応も不要なため、導入コストや維持コストを抑えられる。電波の伝送に単管パイプを活用するため断線もせず、高層階だけでなく地下空間にウェーブガイドLANは使える。
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