西松建設が30階建て高層ビルの現場にWi-Fi環境を構築、LANケーブル敷設が不要に:建設現場の通信環境
西松建設は、地上30階建ての高層ビルの建築現場で、実用的なWi-Fi環境の構築に成功した。無線LAN機器が互いに中継し、ビルの吹き抜けを利用して建物内に通信網を確立し、これまで必要だったLANケーブルの敷設は地上の親機だけで済むようになる。
西松建設は、業務用無線LAN/Wi-Fiソリューションを提供しているPicoCELA(ピコセラ)と共同で、携帯電波が届かない地上30階建ての高層ビル建設工事現場で、無線LAN機器同士が中継役となる「無線多段中継技術」を利用して、LANケーブルを敷設することなく、簡易にWi-Fi環境を構築することに成功した。
配線無しで無線通信網を構築
IoT施工や国が進めるi-Constructionを建設現場に導入する際は、安定した通信環境を整備することが求められるが、携帯電波が届かない高層ビル上層部などでは、LANケーブルの敷設に手間やコストが掛かり、Wi-Fi環境を構築する際の障壁となっていた。
両社の実験では、PicoCELAの屋内外に対応する無線LAN機器「PCWL-0410」を採用し、外装・外壁工事が完了した内装工事の施工段階にある地上30階建ての工事現場で、置局の設置場所を選定した。
手順としては、まず地上の親機から、屋上に設置された機器までの高さ100メートル以上の無線通信を確立。その後、ビルの吹き抜けを利用して、下層部までの無線通信環境を整備した(図の青ルート)。
また、別のルートとして、地上の親機から、通信が必要な中層階のベランダに設置された機器まで、無線通信をつないだ。ビルの内部に無線通信を行い、ビルの吹き抜けを利用して上層階に無線通信網を整えた(図の緑ルート)。
PicoCELAの無線多段中継技術によって、LANケーブルの敷設は地上の親機だけで完了し、無線LAN機器を配置して電源コンセントに挿すだけで、実用的に使用できるWi-Fi環境を構築することが実現した。
実験の成功を受け、西松建設は国内の工事現場に順次導入を進め、生産性向上につながるスマートデバイスや各種IoT機器の工事現場での活用に役立てていく。一方でPicoCELAは、PCWL-0410を建設業界で広く利用可能なアクセスポイントとして提案していくという。
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