奥村組が補修・補強材料のトレーサビリティーシステムを開発、作業時間を40%削減可能:製品動向
奥村組は、既存インフラ構造物維持工事で生じる各種施工情報の収集や施工管理記録の作成といった施工管理を効率化する「補修・補強材料のトレーサビリティーシステム」を開発した。今後、同社は、既存インフラの維持工事に新システムを適用することで、ブラッシュアップを行い、生産性向上につなげていく。さらに、施設管理者の維持管理業務にも有用であることを踏まえ、施設管理者にもシステムの活用を提案することも検討している。
奥村組は、伊藤忠テクノソリューションズの協力を得て、既存インフラ構造物維持工事で生じる各種施工情報の収集や施工管理記録の作成といった施工管理を効率化する「補修・補強材料のトレーサビリティーシステム」を開発したことを2021年3月31日に発表した。
使用材料の集計記録や品質管理記録などをPDFとExcelで出力可能
既存インフラ構造物の維持工事では、作業スペースが狭いため、業務を行う場所が点在することも多く、補修材料は小規模施工に適した梱包サイズの小さいものを多量に使用する。
施工に当たっては、こういった材料の搬入数量や使用量、構造物のどこにどの材料を使用したかなどの情報を材料の梱包単位で記録する必要がある他、活用する材料は急結性が高く2種類以上を練り混ぜることが多いことから、材料の練り混ぜ後の可使時間を含む品質管理情報も合わせて収集・記録しなければならず、大きな負担となっている。
さらに、ほとんどの場合は、現地で手書きにより情報を記録しているため、各種データを集約した施工管理記録の作成では、手書きした情報を事務所でPCへ入力し清書しており、多大な時間と労力を費やしている。
加えて、既存インフラ構造物の維持管理では、過去に実施した工事の施工管理記録が必要不可欠なデータであるため、適切な施工情報の収集、記録、情報化が求められている。
上記の課題を解消するために、奥村組は、伊藤忠テクノソリューションズと共同で、補修・補強材料のトレーサビリティーシステムを開発した。補修・補強材料のトレーサビリティーシステムでは、維持管理工事の計画時や材料搬入時、作業時に入力された情報を一元管理することで、施工管理記録の作成を含む施工管理の効率化を実現する。
機能は、材料と作業に関する情報をインプットするための「入力機能」、システム全体を管理するための「マスター機能」、帳票を出力するための「出力機能」を備えている。使用可能な端末は、タブレット、スマートフォン、PCで、システムが搭載している全機能はクラウドサーバ上で作動するため、通信環境下で複数人による同時アクセスに応じ、トンネル内などの非通信環境下でも入力したデータは端末にストックされ、通信環境下へ移動後にクラウドサーバにアップロードすることができる。
今回のシステムは、収集した施工情報を、個体識別番号情報「主キー」や基本情報、製造情報、搬入日情報、作業日情報、品質管理情報、維持管理情報、付帯情報に分類する。主キーは、個体識別番号をQRコード化し、印刷して材料が梱包されている袋や缶に1つずつ貼り付けられる。このQRコードは、材料搬入時に、スマートフォンやタブレットなどで読み込み、個体識別番号の情報に基本情報、製造情報、搬入日情報を追加し関連付ける。これにより、材料の入荷数量管理や使用期限日の管理を行える。
作業の開始時には、QRコードをスマートフォンやタブレットなどで読み込み、主キーに作業日情報、品質管理情報、維持管理情報を加え、練り混ぜ時間、可使時間、施工環境に合わせた作業の可否、配合などの情報と材料搬入時に入力した情報を相互にリンクさせる。付帯情報は特異な事象が発生した時などにコメントや写真を任意で主キーに登録したものだ。
また、使用材料の集計記録や品質管理記録なども帳票形式のファイル「PDF」「Excel」で出力でき、項目を絞り込めるため、容易に施工管理記録を作れ、業務の円滑化につながる。
奥村組は、補修・補強材料のトレーサビリティーシステムを評価するため、道路トンネルのコンクリート剥落箇所の修復工事で行った左官による断面修復作業にシステムを適用し、実現場での試行を実施した。結果、従来の手法と比較して現場での情報収集作業と事務所での情報整理作業を合わせた全体の時間を40%減らせることが分かった。
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