日立システムズのインフラ劣化状態を見える化するサービス:検査・維持管理
日立システムズは、社会インフラを含む施設や設備の点検・補修業務の維持管理データを専用のクラウド基盤上でAIにより分析し、対象物の劣化状態を見える化する「CYDEEN劣化要因分析支援サービス」を開発した。
日立システムズは、道路などのインフラ構造物や設備を管理する団体向けに、点検・補修計画の策定支援を目的とした「CYDEEN劣化要因分析支援サービス」を2021年3月3日に発売した。
既存の維持管理データのみで利用可能
国土交通省では、建設現場のあらゆるプロセスでICTを活用して生産性向上を図る取り組み「i-Construction」を推進するために、2016年以降、国直轄工事などで積極的にi-Constructionを導入し、昨今では業界でICTの高度利用が普及し始めている。
また、道路施設、上下水道設備、公共施設など社会インフラの老朽化も進んでおり、将来的な技能労働者の不足も予想されることから、ICT活用で社会インフラの維持管理業務を効率化することや熟練技術者のノウハウ継承が急務となっている。
これを受けて、一部の維持管理業務では、車載カメラ「路面測定車両」やドローンなどを用いた点検などで効率化が進められている。しかし、施設や設備によっては路面測定車両の通行やドローンの飛行が困難な場合があり、課題となっていた。さらに、社会インフラの施設と設備で異常状態を示すデータが少なく、ビッグデータを使用したAI分析で損傷や健全度の予測をすることは難しかった。
そこで、日立システムズは、これまでに顧客が蓄積した点検・補修業務における維持管理データを基に、調査、加工、AIによる独自のデータ分析で、インフラの損傷や健全度、影響度を推測する「CYDEEN劣化要因分析支援サービス」を開発した。
CYDEEN劣化要因分析支援サービスは、社会インフラを含む施設や設備の点検・補修業務の維持管理データを、専用のクラウド基盤上でAIにより分析し、対象物の劣化状態をグラフィカルに表示する。これにより、利用者は点検・補修箇所の見落としを防げ、メンテナンスの優先順位付けなどを判断する時間を短縮できる。
従来ICTの活用が難しかった施設や設備でも、既存の維持管理データのみで今回のサービスを使えるため、分析のために新たな計測機器を導入することなく、これまでの運用手順を変えずに、コストを抑えた点検・補修計画業務を行える。
加えて、既存の維持管理データがあれば、河川、上下水道、建物など分野を問わず分析することにも応じている。例えば、製造業の機械設備や石油、ガスなどのプラント設備機器、橋梁(きょうりょう)、トンネル、堤防、ダムなどの土木構造物、そして建築物に付随する設備も対象となる。
また、日立製作所が開発したデータ分析技術を基にしており、異常状態を示すデータが少ない場合でも、データ同士の相関性などを抽出することで、損傷や健全度、影響度の予測を可能としている。サービス化に当たっては、社会課題の解決に直結するさまざまなテーマについて、民間企業などと共同研究を行う東京大学大学院情報学環・学際情報学府の社会連携講座「情報技術によるインフラ高度化」で評価されている。
今後、日立システムズは、CYDEEN維持管理システムを中核に据えて、関連する「CYDEENフィールド作業支援サービス」「CYDEENカメラ利用型メーター自動読み取りサービス」「ドローン運用統合管理サービス」などと連携し、ユーザーのインフラ施設・設備における点検・補修計画作業のDXや効率化を支援する。
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