建築基準法情報を持つファミリと法適合判定プログラムで、清水建設が第1号案件のBIM建築確認:BIM
清水建設は、建築基準法関連情報を持つファミリで作成したBIMモデルと法適合を判定するプログラムを活用し、建築確認申請の事前協議を支援する新システムを構築。このほど、第1号の案件として、総合病院の建築確認申請に適用し、事前協議と本申請を経て確認済証が交付された。
清水建設と指定確認検査機関の日本建築センター(BCJ)は、総合病院の建築確認申請で、業界初とするBIMデータと法適合判定プログラムなどを活用した事前協議を実施した。その後、2021年4月に本申請を経て、BCJから確認済証が交付されたと明らかにした。
事前協議は、2020年に清水建設がBCJの協力を得て構築した「BIMデータによる建築確認システム」に基づき行った。現行では、法により建築主事による確認申請図書(図書及び書類)の確認が義務付けられているため、申請図書による事前協議も行ったという。
日本建築センター・東京建築検査機構と「BIM 360」でBIMモデルを共有
BIMデータによる建築確認システムでの建築確認の第1号案件は、清水建設が設計・施工を受注した埼玉県三郷市の「三愛会総合病院」。施設規模は地上7階建て延べ床面積約1万7200平方メートルで、構造はS造(一部CFT造)。2022年9月中旬の完成を目指し、2021年3月に着工した。建築確認は、2020年2月の設計着手後に、同年10月から建築確認システムを用いて進めた。
建築確認システムの初適用にあたっては、建築確認の審査手順、審査に必要なデータや表現などについてBCJと協議した。協議結果に基づき、病院建築の法適合判定に必要なプログラム13ツールや審査に必要な情報を表示するビューテンプレート(ビュワー)32種を整備。
また、建築確認システムで用いる構造システムの「BUS-6 +Revit Op.」や生活産業研究所の面積算定ツール「求積ツールfor Revit」といった市販ソフトについても、ベンダーの協力を得て事前協議に必要な機能を付加した。
BUS-6 +Revit Op.は、一貫構造計算ソフト「BUS-6」とRevitの間でデータ共有を可能にするオプションプログラム「+Revit Op.」で構成し、構造計算モデルとBIMモデルの整合性が担保される。求積ツールfor Revitは、Revitのアドオンとして、入力済みの3D建物モデルから、面積計算を効率的に行うツールで2021年秋に発売する予定。
BIMデータによる事前協議に際しては、既にBCJによる確認を得ている建築基準法関連情報を持つファミリ(部材の形状情報と属性情報)でBIMモデルを作成し、クラウド「BIM 360」を介してBCJと共有。法適合判定プログラムと専用機能を付加した市販ソフトなどを活用し、BIMデータ上で事前協議を行った。
なお、三愛会総合病院は、2007年6月20日に施行された改正建築基準法で新設された「構造計算適合性判定」※の対象になるため、指定構造計算適合性判定機関の東京建築検査機構(TBTC)に構造計算適合性判定を申請。TBTCともBIM 360を介してBIMデータを共有し、必要な機能が付加された構造計算ソフトなどを用いて事前協議を進めた。
※「構造計算適合性判定」:一定規模以上の建築物で建築確認審査を受ける場合、当該建築の構造計算の審査「構造計算適合性判定」を指定構造計算適合性判定機関に依頼。適合すると判定された後に、建築主事または指定確認検査機関により確認済証が交付される制度
事前協議を経た後は、法適合を確認したBIMモデルからPDF形式の確認申請図書を出力し、建築確認を電子申請。最終的に、BCJが確認済証の発行に必要な手続きを行った。
清水建設が今回用いた建築確認システムを開発した背景には、BIMのデータを使用した建築確認申請を実現した事例はあるが、現状ではBIMの3D形状による建物空間の把握とBIMから出力した図面による審査にとどまっており、BIMの属性情報を含むデータと法適合判定のプログラムを活用した事例が無いことを挙げている。
そのため、現在の状況や国土交通省が主催する建築BIM推進会議の動向を踏まえ、2020年にBCJの協力を得て、建築基準法関連情報を持つファミリで作成したBIMモデルと法適合を判定するプログラムなどを活用し、建築確認の事前協議を支援する新システムを構築した。
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