排水湿潤連続養生技術「Wキュアリング」をトンネル工事に適用:導入事例
大成建設は、2017年のトンネル工事において「Wキュアリング」を適用し、材齢3年目となる2020年9月に覆工コンクリート品質調査における性状評価で、塩害・凍害に対して従来のセントルを用いた工法よりも耐久性が大幅に向上することを確認した。
大成建設は、2017年の国土交通省東北地方整備局発注のトンネル工事において「Wキュアリング」を適用した。材齢3年目となる2020年9月に覆工コンクリート品質調査における性状評価をしたところ、塩害・凍害に対して従来の移動式鋼製型枠(セントル)を用いた工法よりも耐久性が大幅に向上することを確認したという。
コンクリート構造物の品質を保つためには、水分や塩分などの浸透による内部の鉄筋腐食を防ぎ、凍結融解による表層の剥離を抑制することが重要だ。特にトンネル工事では、凍結融解の影響を受けやすい覆工コンクリート下部や坑口近傍の外部壁面で、耐久性を長く保つことが求められる。寒冷地では道路の凍結抑制剤の主成分である塩化ナトリウムを含んだ水分が浸透し、コンクリート表面の剥離や鉄筋腐食が発生しやすい状況にあった。
Wキュアリングは、2013年開発のコンクリート表層の耐久性向上を図る排水湿潤連続養生技術だ。覆工コンクリート工事にて、木枠、透水板、透水性シートを一体化させた透水性のあるWキュアリング専用型枠ユニットを設置し、コンクリート打込み後、脱型せずに湿潤連続養生を実施する。従来工法と同様の工程で覆工コンクリートの施工が可能だ。
覆工コンクリート表層に緻密な組織を形成し、表層での水分や塩分の浸透、透気を抑制するため、塩害や凍害に対して覆工コンクリートの耐久性向上を図ることができる。
性状評価の結果、従来工法と比較し、塩害・凍害抑制に関連する表面吸水速度は約18分の1、表層透気係数は約20分の1まで低下することを確認した。同技術で施工したコンクリート表面の表層透気係数は、国土交通省東北地方整備局の「コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)トンネル覆工コンクリート編(平成28年5月)」記載の評価グレードでランク「優」の品質が得られた。従来工法に比べ構造物の耐久性が約2倍向上すると推定されることから、構造物メンテナンス頻度が低減できるとしている。
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