三井住友建設が広範囲の地盤挙動を監視するクラウドシステムを開発:ICT
三井住友建設は、土工事における広範囲な斜面の地盤挙動を監視するクラウドシステム「GENESIS/Field Head Quarters」を開発した。今後、計測されたデータを人工知能による変状予測の教師データとして蓄積し、予測精度の向上を目指す。さらに、粉じん、水質、騒音などの環境モニタリング項目も追加し、環境負荷を低減する施工にも役立てる。
三井住友建設は、土工事における広範囲な斜面の地盤挙動を監視するクラウドシステム「GENESIS(ジェネシス)/Field Head Quarters(フィールドヘッドクウォーターズFHQ)」を開発し、2021年3月に施工中の現場へ導入して以降、順次現場への適用を進めている。
斜面の地盤挙動を地形図上に「最新」「1時間前」「1日前」のように複数表示
土工事での斜面を含めた地山全体の挙動監視は、監視網を設営するための電力網や通信網の構築に多大な労力と費用を要するだけでなく作業に危険が伴うため、これまで包括的なモニタリングが困難だった。
そこで三井住友建設は、設置が簡易で、自家用発電機能とパケット通信機能を備えた自立型地盤挙動監視局「GENESIS/Field Power Station(フィールドパワーステーション、FPS)」を活用し、各種計測情報をクラウド上で一元的にデータベース化するシステムのGENESIS/FHQを開発した。
GENESIS/FHQは、各計測点情報の時系列表示と、挙動を地形図上に「最新」「1時間前」「1日前」のように複数映すことで、地山挙動の空間分布を可視化する。加えて、天気図などを作成する際に用いる「クリギング法」を採用することで、未計測点の挙動を平均法により評し、局所的に特異な挙動の評価を行える。これにより危険範囲の特定が容易になった。
また、GENESIS/FPSから随時送信されてくるさまざまな計測情報(降雨量、地盤変位、地盤傾斜、地下水位、土壌水分量など)をクラウド上で一元的にデータベース化することで、従来困難だった地山全体の包括的で継続的なモニタリングを可能にした。得られたデータは、PCやスマートフォンなどから常時確かめられるため、リアルタイムに変状を検出し、土工事で高度かつ合理的な安全管理を実現する。
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