竹中土木とライカが盛土の品質管理で精度を向上させた「転圧管理システム」を開発:検査・維持管理
竹中土木とライカジオシステムズは、転圧ローラに2基のGNSSアンテナを装着することで、盛土の品質管理精度を向上させた転圧管理システム「Dual Mast Roller」を実用化した。実証試験では、走行軌跡が水平方向で20ミリ以下、鉛直方向で30ミリ以下の高精度でデータ取得が可能なことを確認した。
竹中土木とライカジオシステムズは2021年3月3日、盛土の品質管理精度を大幅に向上させた転圧管理システム「Dual Mast Roller(デュアルマストローラ)」を開発したと発表した。
勾配がある現場や車体旋回時の誤差にも対応
Dual Mast Rollerは、転圧ローラに衛星測位システムの受信機となるGNSSアンテナ2基と傾斜計を搭載することで高い精度で鉄輪位置の取得を可能にした転圧管理システム。
GNSSは、複数の測位衛星から時刻情報付きの信号を受信し、地上での現在位置を計測する衛星測位システムの総称。GNSSを用いた盛土の締固め管理では、転圧機械に設置したGNSSアンテナで、転圧した箇所の位置座標を取得して、各エリアの転圧回数を管理する。
従来方法では1基のGNSSアンテナを運転席の屋根などに設置し、転圧箇所との相対距離から計算して、転圧箇所の位置座標を算出していた。しかし、転圧ローラは、アンテナ設置位置と転圧する鉄輪中心位置が離れているため、施工場所に勾配がある場合や車体を旋回させた際に大きな誤差が生じ、管理に適さないケースがあった。
今回、両社が開発したDual Mast Rollerは、転圧ローラの鉄輪の両側に2基のGNSSアンテナと傾斜計を取り付け、鉄輪位置を正確に算出することができるようにした。そのため、転圧面に勾配がある場合や車体旋回時でも、GNSSアンテナ自身が有する誤差範囲内の水平方向(x、y方向)で20ミリ以下、鉛直方向(z方向)30ミリ以下と、高い精度での走行軌跡管理が実現する。
また、走行軌跡管理で求めた座標を基に、鉄輪の方向角及び傾斜角を計算し、走行した鉄輪幅で点群データも取得する。点群密度は、2基のGNSSより求めた方向角と基線を基に任意で取得し、点群ピッチの設定も可能としている。点群データは、クラウドと連携させることで、現場条件に合わせた新たな管理手法の構築も期待される。
今後は、現場条件に合わせた次層の巻き出し層厚(盛土で一層分の土の厚み)の作成を目指す他、点群データから次層の撒(ま)き出しデータを作成しクラウド上でブルドーザと連携する新たな施工管理をはじめ、面的な層厚管理、取得した点群データによるリアルタイムな土量管理や土量変化率の管理といった手法の構築を予定している。
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