東大生産技研、セメントなしで砂同士を直接接着し建設材料を製造する技術:新建材
東京大学生産技術研究所は、セメントや樹脂などの接着成分を用いず、触媒によって砂同士を直接接着することで建設材料を製造する技術を開発した。砂漠の砂の利用や、月面など地球外での建設への応用、温室効果ガスの排出抑制が期待される。
東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授は、セメントや樹脂などの接着成分を用いず、触媒によって砂同士を直接接着することで建設材料を製造する技術を開発した。
代表的な建設材料であるコンクリートは、一般に、セメント、砂、砂利に水を加えて製造するが、近年は砂や砂利が世界的に不足している。また、セメント製造におけるCO2排出量は、全世界のCO2排出量の8%を占める。さらに、月や火星などでの建設も現実味を帯びる中、基地の材料は現地調達が望ましく、地球外では溶融法で必要となるエネルギーの確保や温度管理は容易ではないとされた。よって地球上に加え月面や火星でも入手でき、偏在せずに存在し、枯渇の心配がない原料を用い、低エネルギー消費で製造できる建設材料が求められてきた。
同技術では、砂とアルコール、触媒を密閉容器に入れて加熱・冷却し、砂の化学結合を切断・再生することで、硬化体を製造する。製造後に生じるアルコール、触媒からなる廃液は繰り返し利用できる。SiO2(シリカ、二酸化ケイ素)を主成分とする珪砂、砂岩、ガラス、砂漠の砂などであれば接着が可能で、地殻はSiO2を主成分とする砂や砂利に覆われているため、地球上のあらゆる場所で原料を半無限に調達でき、枯渇の心配がなくなるという。
SiO2は月や火星の砂の主成分でもあるため、月や火星での基地建設への応用も想定できる。また、溶融法の製造温度が1000度以上であるのに対し、同技術で必要な温度は最大で240度であるため、エネルギー消費やそれに伴うCO2の大幅な削減も期待できる。必要温度のさらなる低減も検討している。
コンクリートは、溶脱や乾湿による体積変化が顕著だが、同技術は砂や砂利同士を直接接着する、いわば人口岩を作る技術だ。ケイ素を主体とする岩石に近いため、コンクリートと比較して高い耐久性が期待できるという。
同成果は、東京大学生産技術研究所研究速報誌「生産研究」で2021年5月1日に公開した。
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