京都市内で10年ぶりの延べ3万m2超えの賃貸オフィスビルが竣工、大阪ガス都市開発:プロジェクト(2/2 ページ)
大阪ガス都市開発は、CBREの調べによれば京都市内で10年ぶりの大規模賃貸オフィスビル供給となる「KRP10号館」が竣工したことを公表した。
連続性のある一体的な都市景観を形成
建物の外観デザインでは、京都の主要幹線道路である五条通りに面している点やKRP10号館と隣接するオフィスビル「KRP9号館」が林立している点を考慮し、連続性のある一体的な都市景観の形成を目指した。低層部は、KRP9号館から連続する開放的な2層吹き抜けの路地空間を設け、高層部は水平庇(ひさし)とガラスを基調としたシンプルな構成の中に、テラスや縦格子をリズミカルに設け、動きのある軽快なファサードとした。
内装のデザインでは、京都の街並み、町家、茶室などの空間構成や美意識をモチーフに、陰影や空間の奥行きを創出した。具体的には、東西に通り抜けができるエントランスホールを町家の「通り庭」と見立て、中央エリアにトップライトから光が降り注ぐ光庭を配置した。
エントランスホールの中央に設置したアルミ鋳物の装飾パネルは、「麻の葉文様」と「四季の草花文様」で構成したものを採用し、京都市内を流れる川と四季の移ろいを表現。壁面装飾のコンセプト作成および文様の選定は、京都市産業技術研究所と協力し、原型制作と鋳作は傳來工房に依頼した。また、土壁、和紙の装飾壁やサインなどでは、伝統的な材料を用いて現代的に構築した。
環境性について、KRP地区が9世紀半ばに貴族の館があったことを踏まえ、源氏物語に登場する「ヤマブキ」「キキョウ」「オミナエシ」などの植物を採用した緑地を敷地内に設置した他、KRP9号館から連続する路地空間には、ベンチやカウンターとセットとなった植栽帯を多数設け、緑とふれあう場所を用意。「フジバカマ」など絶滅が危惧される植物の保全も図っている。
再生可能エネルギーの活用としては、太陽光発電設備約40キロワットを導入し、屋上のトップライトには動力を使わずに下層階まで光を届ける「スカイシャワー」を設置して、エントランスホールや各階共用廊下に自然光を取り入れ、環境負荷の低減と快適な空間を実現している。
防災対応に関しては、常用・保安用発電機としてガスコージェネレーションシステムを採用しているため、停電時に電力供給を行える。建物外部には災害時に使用できるマンホールトイレを完備した。
KRP10号館の概要
KRP10号館は、S造(一部SRC造、RC造)地下1階/地上7階建てで、延べ床面積は3万4219.21平方メートル。所在地は京都市下京区中堂寺粟田町91番地で、敷地面積は3万8462.88平方メートル。設計は日建設計が、施工は大林組がそれぞれ担当した。着工は2019年7月1日で、竣工は2021年2月26日。
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