空調機のDX化を実現するクラウドサービス、遠隔監視・制御・更新・IoT機器連携に対応:製品動向(3/3 ページ)
ダイキン工業は2021年6月1日にクラウド型空調コントロールサービス「DK CONNECT」を発売する。DK CONNECTは、インターネットに接続する空調機のコントロールと運転のデータを送受信するネットワーク端末「DK CONNECT edge」と専用クラウドから成るもので、専用クラウドは空調機100万台の同時接続とユーザー数30万人を想定して開発された。
100万台の空調機を接続する専用クラウドの開発がハードルに
ダイキン工業の橋本氏は、「DK CONNECTは、空調機器のコントロールや遠隔点検、更新などを空調バリューチェーンの全工程で同じシステム基盤を用いて行える。この構想は2015年の時点で存在していたが、当初DK CONNECTの開発は難航した。理由の1つは、システム基盤として、これまでの遠隔監視用IoTクラウドに空調を制御するアプリケーションを搭載して開発した試作品が1万台の空調機を同時接続すると稼働しなくなったためだ。解決策として、有識者と協力し、2年間をかけ、複数のアプリケーションから送られる大量のデータを処理するクラウドプラットフォームを開発した。クラウドプラットフォームは、100万台以上のダイキン工業製空調機を同時につなげ、分単位のデータ収集とリアルタイム制御を実現する」と述べた。
加えて、「次にハードルとなったのは、当社のさまざまな空調機をクラウドにつなぐことだった。これまで、業務用の空調機では発売のたびに、各機の仕様をまとめたデータベースをクラウド用に作成していたため、クラウドの接続はリリースから2カ月後になっていた。上市と同時に空調機がクラウドに接続する環境を整備するために、空調機の開発者がハードの図面と一緒に設計部品表(EBOM)を登録し、EBOMからクラウド用のデータベースを自動生成するプログラムを開発して、作業工程に実装した」と開発の苦労を明かした。
また、専用クラウド用のアプリケーション開発では、顧客のニーズを汲(く)み取ることを目的に、営業部とサービス部、アプリケーション開発者が連携しやすい体制を構築した。
今後、ダイキン工業では、DK CONNECTに、温調や調湿、気流を制御し、院内感染を抑制する機能を実装する他、複数ある建物のピーク時における使用電力カットと指定のエリアにある施設の空調を統合的にコントロールする機能を加える。さらに、従業員のバイタルデータと連動して集中力と生産性を高める空調を行える機能を追加する上、集積した故障と異常の情報をビッグデータ化し顧客に合わせた予防保全プランを作れる環境を醸成する。
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