設計作業を「もっとスマートに」する自動化とコラボレーションの新機能、AutoCAD最新版:CAD
AutoCADがバージョンアップし、設計作業を効率化する自動化とコラボレーションの機能が追加された。
オートデスクは2021年3月24日、CADソフトウェア「AutoCAD」の最新バージョンをリリースした。製品構成は、3Dモデルリングなど機能が豊富な「Autodesk AutoCAD 2022」、低価格の「Autodesk AutoCAD LT 2022」、Mac対応の「Autodesk(R) AutoCAD(R) 2022 for Mac」「Autodesk(R) AutoCAD LT(R) 2022 for Mac」の4種類。
「トレース」や「共有」など、日々の働き方に変革をもたらす新機能
最新版では、「トレース」や「共有」など、日々の働き方に変革をもたらす新機能を追加し、レビュープロセスもさらに効率化された。どこにいてもプロジェクト関係者とオンラインでつながり、安全に作業を進められる。新しい「カウント」機能は、ブロックやジオメトリを自動で集計し、面倒な手作業や人的ミスを削減すると同時に、正確性及び生産性の向上が図れる。
新機能のうち、トレースは、デジタルコラボレーションを支援。プロジェクトチームはあらゆるデバイスから作業にアクセスし、既存の図面を変更することなく、DWGファイルにマークアップを付けられる。
例えば、あるメンバーがWebアプリやモバイルアプリでトレースを作成し、設計変更案をマークアップする。他のメンバーがこのトレースをデスクトップのAutoCADで開くと、DWGファイル上にフィードバックされ、変更内容が反映されている。このように、どこにいてもチームとデータを一元的に共有しつつ、効率的な図面レビューが行えるデジタルワークフローが実現する。
共有機能では、AutoCADから直接、他のメンバーとセキュアな環境下で図面を共有する。「表示のみ」または「コピーを編集して保存」の適切なアクセス権を設定することで、権限管理された図面のコピーをチームメンバーに送信できる。共有リンクは、AutoCADのデスクトップ版かWebアプリで生成可能で、Webアプリでダイレクトにリンクが開ける。
新規追加されたカウント機能では、ブロックやジオメトリの集計作業を自動化することで、作業時間や人的ミスを削減。カウントデータは、フィールド値として表に書き出し、簡単に更新することが可能だ。手作業で集計する必要が無くなり、部品・部材の数を誤ったり、間違った数量の注文をしたりといった人的ミスを防げる。
また、「Autodesk Docsにプッシュ」機能を使用すると、AutoCADからCAD図面をPDF形式でAutodesk Docsに直接出力する。これまでのようにPDFファイルをローカルに保存することも、Webブラウザを開いて図面シートをクラウドにアップロードすることも不要となる。
クラウドへのアクセスは、Autodesk DriveやAutodesk Docs、AutoCAD Webアプリと連携したため、Webアプリとモバイルアプリからクラウド上のDWGデータへ容易にアクセスしやすくなった。
さらに、「AutoCADの単一インスタンスで複数の図面を同時に表示、編集したい」というユーザーの声に応え、フローティングウィンドウの機能を実装。図面タブを分離させて、ウィンドウを左右に並べて表示したり、複数のモニターに表示したりできる。
クロス インダストリー ストラテジー プログラム部門 バイス プレジデント ミミ・ホアン氏は、「最新のAutoCADは、これまでの絶え間ないイノベーションの結晶。自動化とコラボレーションを中心とした新機能が追加されている。『もっとハードに』ではなく、『もっとスマートに』作業を進め、本当に重要な作業に集中できるようにユーザーをサポートする」とコメントしている。
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