清水建設の早期火災検知AIシステムが木造建築の火事感知で有効、実験で判明:製品動向
清水建設は、早期火災検知AIシステム「火災検知@Shimz.AI.evo」が木造建築物の火災検知にも有効であることを実証実験で明らかにした。今後、従来ターゲットにしていた物流施設に加え、文化的な価値の高い伝統木造建築に対しても、火災検知対象面積1平方メートル当たり3000〜5000円程度(エンジニアリング費込)で火災検知@Shimz.AI.evoを提供する。
清水建設は、物流施設向けに開発した早期火災検知AIシステム「火災検知@Shimz.AI.evo」が、ISO規格に基づき新たに実施した実証実験で、木造建築物の火災検知への効果を確認したことを2021年1月14日に発表した。
首里城の焼失を機に伝統木造建築への適用可能性に関する問い合わせが増加
火災検知@Shimz.AI.evoは、各地で発生している物流施設の大規模火災を踏まえ、清水建設が2019年7月に開発したシステム。開発にあたっては、物流施設内に大量にある段ボールの燃焼時に発生する特有のガス「エイコサン」が煙よりも早く拡散することに着目。火災検知@Shimz.AI.evoは、エイコサンをガスセンサーにセンシングさせ、AIが検知情報を総合的に分析することで火災の発生を早期に検知する。また、高さ8メートルの大空間で火災が起きた場合、火災検知@Shimz.AI.evoは、約10分で火事の発生を感知するため、水バケツで消火できる程度の出火に抑えられる。
上記のような機能を備える火災検知@Shimz.AI.evoの木造建築物に対する効果を今回清水建設が検証するに至った要因には、沖縄県那覇市に位置した首里城の焼失を機に、火災検知@Shimz.AI.evoの伝統木造建築への適用可能性に関する問い合わせが増加したことがある。木造建築に対する火災検知@Shimz.AI.evoの有効性調査では、木材の初期燃焼時に発生・拡散する一酸化炭素などを含む特有のガスを火災検知@Shimz.AI.evoで、センシング可能か実証実験で調べた。実験にあたっては、火災安全工学の専門家である横浜国立大学大学院環境情報研究院 岡泰資教授がサポートした。
実験は、ISO7204規格に基づき、広さ60平方メートルで、高さ4メートルの部屋を設けた実験施設で行った。部屋の中央に加熱機、そこから3メートル離れた位置の天井にガスセンサーを設置。加熱機の上で木片を燃焼させ、ガスの検知に要した時間やガスの濃度との関係などを総合的に分析した結果、火災検知@Shimz.AI.evoが木造建築の火災を確実に検知できることが明らかになった。
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