「コロナの影響は想定内、ゼネコンは“鹿島のみ増益”」第3四半期決算から見る市場動向:産業動向(2/2 ページ)
ヒューマンタッチ総研は、2021年3月期第3四半期決算のまとめと今後の市場予測を公表した。レポートでは、土木工事業と電気設備工事業は堅調だが、ゼネコン、管工事業、プラント・エンジニアリング業では厳しい決算となったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は各社が予想した範囲内にとどまったと分析している。
管工事は6社が減収減益、やや改善傾向だが厳しい決算が続く
管工事業の売上高は、9社が前年同四半期を下回り、6社が減収減益となった(図表4)。10社合計では、売上高は前年同四半期比▲13.6%(第2四半期は▲16.2%)、純利益が同▲28.5%(同▲35.6%)となっており、第3四半期に入って売上・利益ともに若干の改善が見られたが、変わらず厳しい決算結果が続いている。
2021年3月期の通期業績予想は、朝日工業社が利益を上方修正しましたが、高砂熱学工業、三機工業、テクノ菱和の3社が売上・利益ともに下方修正しており、厳しい経営環境に直面していることがうかがえる。
プラントは5社が減益、1社が赤字、利益面で厳しい決算結果
プラント・エンジニアリング業の売上高は、5社が前年同四半期を下回り、うち3社が減収減益となっている(図表5)。純利益を見ると5社が減益、1社が赤字となっていることからも、利益面で厳しい決算になっていることが分かる。
10社合計の売上高は、前年同四半期比▲4.2%(第2四半期は▲3.8%)、純利益は同▲18.6%(同▲17.3%)で、売上高・利益ともに第2四半期よりもやや悪化。
2021年3月期の通期業績予想は、太平電業と田辺工業が売上高と純利益でともに上方修正、富士古川E&Cが純利益を上方修正している。
住宅・不動産は10社合計で第2四半期よりも、売上高・純利益ともに改善
住宅・不動産業の売上高は6社が前年同四半期を下回り、このうち4社が減収減益(図表6)。10社合計の売上高は前年同四半期比▲0.3%(第2 四半期は▲6.5%)、純利益は同▲4.1%(同▲26.5%)となり、第2四半期よりも売上高・純利益ともに改善。
2021年3月期の通期業績予想は、三菱地所とタカラレーベンが売上高・純利益ともに上方修正、積水化学工業が売上高を上方修正、野村不動産ホールディングスが売上高を下方修正、純利益を上方修正している。
ヒューマンタッチ総研所長の高本和幸氏は調査レポートの総括で、「建設業関連6業種の各主要10社合計の売上高と純利益の前年同四半期比増減率を見ると、土木工事業と電気設備工事業の純利益が前年同四半期を上回り堅調な決算だったが、ゼネコン、管工事業、プラント・エンジニアリング業では純利益が大幅に減少し、厳しい経営状況であることが分かった」と話す(図表7)。
売上高については、「6業種全てで前年同四半期割れとなったが、住宅・マンション建設業は▲0.3%、土木工事業は▲0.4%と、ほぼ前年並みをキープ。全体で計16社が純利益を上方修正していることから見ても、新型コロナウイルス感染症拡大が建設業の経営に与えた影響は、各社の予想を上回るものではなかったと考えられる」と分析。
ただし、「新型コロナウイルス感染症拡大が日本経済全体に与えた影響は大きく、今後、民間の建設投資の回復には不透明な要素も多く見られることから、2021年3月期決算が予想通りで着地できるのか、来期(2022年3月期)についてはどのような状況になるのか引き続き注視していきたい」とコメントしている。
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