スマホで日報と出来高を入力・閲覧できる原価管理クラウド、マスターの入力は不要:設備業ITフェア ONLINE 2021
コンピュータシステム研究所は、現場のスタッフがスマートフォンで作業日報や原価情報を入力でき、そのデータをリアルタイムに集計し、クラウド経由で管理者が各現場の出来高進捗と原価状況を把握する事が可能な建設業向け原価管理クラウド「MARS Evo」を開発した。MARS Evoは、運用前に単価や歩掛(ぶがかり)などの膨大なマスター入力が不要で、導入してからスピーディーに使える。
全国設備業IT推進会は、設備分野の最新ソリューションを紹介するイベント「設備業ITフェア ONLINE 2021」(会期:2021年2月9〜10日)をオンラインで開催した。
会期中に繰り広げられたセミナーの中から、コンピュータシステム研究所 東京営業所 土屋太平氏が、建設業の原価管理に関して説明した講演をレポートする。会場では、土屋氏が、建設業の動向や原価集計と原価管理の違い、原価管理の利点、建設業向け原価管理クラウド「MARS Evo」を紹介した。
現在、公共工事の労務費はバブル時を超過
まず、土屋氏は、建設業の動向に関して、「国土交通省が発表したデータによれば、建設投資額は、1992年度に約84兆円となりピークを迎えたが、2011年度に約42兆円に落ち込んだ後、増加に転じ、2019年度は約62兆9400億円となった。2019年度末の建設業者数は約47万者で、最盛期と比べて約22%減少した。2019年の建設業就業者数は499万人で、ピーク時から約27%減った」と述べた。
続けて、「2019年度における建設業就業者数の内訳は、55歳が全体の35%を占め、29歳以下は約11%で、労働者の高齢化が進んでおり、次世代への技術継承が課題となっているのが分かる。さらに、高齢の就業者が10年後に退職し、働き手が足りなくなり、人件費が上昇して、工事の労務費が高騰する見込みだ。そのため、工程を正確に管理し、不必要な労務費を抑えることが、建設会社が発展する上で重要だ」と語った。
一方、2019年における建設業就業者数は、実数ベースで、2018年と比較して、55歳以上が約1万増えたが、29歳以下は約2万人増加し、若手のスタッフが増えつつある。また、近年、建設業に従事する男性労働者の年間賃金総支給額は上昇傾向にある。要因の1つは、昨今行われる公共工事の労務単価改訂で、現在、公共工事の労務費はバブル時を超えているという。
原価集計と原価管理の違いについて、土屋氏は、「原価集計とは、毎月の請求書を現場ごとに振り分けて、原価を集計し、損益を確認することだ。原価管理とは、日報などから現場の状況を金額ベースで見える化し、現状を把握して、問題があれば改善することを指す。現場集計は終わった現場の損益をチェックするのみだが、現場管理には、人材と材料の無駄を常時把握でき、常に現場の損益を確かめられるといったメリットがある。原価管理を行うために役立つのが原価管理クラウドのMARS Evoだ」とコメントした。
MARS Evoは、コンピュータシステム研究所が2020年6月15日にリリースしたクラウドで、場所を選ばずスマートフォンを用いて日報と出来高の入力と閲覧が可能。作業日報をMARS Evoにインプットすると、クラウド上の原価情報にすぐ反映される他、クラウド上で材料費や労務費、外注費、重機費といった各項目の予算額や原価累計、支払い予想額、完成予想原価、予算残の情報も見られる。
さらに、スマートフォンで撮影した手書きの日報や納品書などの原価管理に関する資料を現場からMARS Evoにアップロードすれば、ブラウザを介して、事務所の事務員にこのデータを共有する事ができる。
一般的な原価管理システムとMARS Evoの違いについて、土屋氏は、「MARS Evoは、一般的な原価管理システムとは異なり、運用前に単価や歩掛(ぶがかり)などの膨大なマスター入力が不要で、導入してからスピーディーに使える。また、当社の土木積算システム“ATLUS REAL Evo”の工事データと連携し、人力による計算では対応が難しい施工パッケージ型積算方式の機労材構成比を算出できるため、実行予算の作成も容易だ」と解説した。
施工パッケージ型積算方式とは、直接工事費について、施工単位ごとに機械経費、労務費、材料費を含んだ標準単価を設定し、積算する方式。機労材とは、機械、労務、材料をまとめた略語。
MARS Evo 基本システムの価格は、5年の保守サービス付きで、90万円〜(税別)。
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