清水建設と順天堂大学が建物の感染症対策のレベルを評価可能なサービスを開発:産業動向(2/2 ページ)
清水建設と順天堂大学は共同で、建物内の感染防止機能を評価する「感染リスクアセスメントツール(オフィス版Ver.1.0)」と感染症対策リスト「ソリューションマトリクス」を開発した。2021年5〜6月頃に両サービスの本格的な運用を開始する予定だ。
マイクロ飛沫を効率的に排出する空調システムなどを網羅
ソリューションマトリクスは、感染リスクアセスメントツールの結果に合わせて、提案もしくは提供する取り組みや設備、システムを網羅したリストで、感染症対策に効果的なものをリストアップしている。
田中氏は、「ソリューションマトリクスで扱っている設備とシステムには、マイクロ飛沫を効率的に排出する空調システムやフィルターと紫外線(UV)の併用でウイルスを除去する空調機がある。さらに、0.5マイクロメートル以上の浮遊粒子における濃度をモニタリングするバーティクルセンサーやCo2センサー、人の密度を測るセンサーにより、屋内の換気量を制御し、感染防止と省エネを両立するシステムも用意している」と話す。
感染リスクアセスメントツールとソリューションマトリクスを利用者に提供する際の流れは、まず、専門のスタッフが、アセスメントシートで建物の構造や設備などを感染経路別に評価した後、問題点を抽出する。次に、建築主や建物の管理者と建物における感染症対策の目標レベルを設定し、ソリューションマトリクスで具体策を提案して、その具体策に基づいた処置を清水建設と順天堂大学が行う。感染リスクアセスメントツールの実施からソリューションマトリクスによる具体策の提案までの期間は1〜2週間だという。
堀氏は、「感染症対策の目標レベルを設定する理由は、感染リスクアセスメントツールとソリューションマトリクスが、施設の感染リスクをゼロにすることを目的にしたサービスではないからだ。両サービスは、建築主や建物の管理者が、費用面で無理なく、建物の感染リスクをできる限り下げられるものを目指す」とコメントした。
続けて、堀氏は、今後の展開について、「両サービスはすぐに展開できる状態にあるが、改良できるポイントを探すため、テスト運用を2021年2月から4月まで行う。その後、2021年5〜6月頃に両サービスの本格的な運用を開始する予定で、利用料金は建築主や建物の管理者が手の届く価格を見込んでいる。両サービスを受けた施設には認証を発行することを構想しており、この認証は、商業施設が活用すれば、競合他社への差別化につながると想定している」と明かした。
【訂正:初出時、記事内容に誤りがありました。上記記事はすでに訂正済みです(2021年2月26日11時36分)】
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